■大谷翔平クラス?『クロスゲーム』の樹多村光

 前述の通り、比呂は弱点が見当たらない素晴らしい投手、野球選手だと言える。そんな比呂の対抗馬として挙げられるのが『クロスゲーム』の樹多村光だ。

『クロスゲーム』は2005年から2010年まで連載された作品だ。連載期間中の2006年夏の甲子園大会では田中将大選手の駒大苫小牧と斎藤佑樹氏の早稲田実業の決勝戦が日本中を沸かせた。

 まず、光の投手として特筆すべきは球速だろう。比呂の152キロを上回る158キロの速球が最大の武器だ。スピード表記はないが、作中では160キロを投げたと思しき描写もある。花巻東時代に大谷翔平選手が高校野球史上初の160キロを記録したのが2012年なので時代を先取りしていたと言えるだろう。

 達也、比呂と同じく速球派ではあるが球種もスライダー、カーブ、カットボール、チェンジアップを投げることができる。しかし、比呂の140キロフォークや高速スライダーのようなレベルの変化球だという描写はない。変化球に関しては比呂に軍配が上がると思われる。

 凄まじい速球を投げるがコントロールは良好だ。しかし、疲れるとコントロールが乱れる描写もあり、ここも比呂のほうが優れていると思われる。

 光が本格的に野球を始めたのは高校に入ってからだ。しかし、達也と違い、小学生の頃からトレーニングを積んでいた。そのため野球歴は達也より長く、比呂よりは短い。

 最高成績は3年夏の甲子園出場だ。甲子園での試合は描かれていないので結果は不明となっている。

 まとめると「素質の上杉達也」「総合力の国見比呂」「球速の樹多村光」といったところだろうか。作中の描写に限れば、やはり総合的には比呂があだち充作品最強だと考えられる。

 高校に入ってから本格的に野球を始めた達也と光も素質では負けていないだろうが、さすがに相手が悪い。

 ちなみに他の候補としては『H2』で比呂にも劣らぬ才能を見せた「広田勝利」。1年生の夏にエースで4番として甲子園を制覇し、158キロを投げる左腕『KATSU!』の「岬新一」。女性であることを隠してプロ野球選手をやっている『アイドルA』の「里美あずさ」などがいる。

 なお、今後の活躍次第では最強投手『MIX』の「立花投馬」になるかもしれない。あなたが思うあだち充作品最強投手は誰だろうか。

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