『タッチ』上杉達也、『H2』国見比呂、『クロスゲーム』樹多村光…あだち充「野球漫画」の最強ピッチャーは誰か?の画像
少年サンデーコミックス『タッチ』完全復刻版第13巻(小学館)

タッチ』『H2』『クロスゲーム』に、現在連載中の『MIX』などなど、高校野球部を舞台にした名作漫画を数多く描いてきた漫画家・あだち充氏。これらの作品に登場するのはいずれもすごい才能を秘めた人物たちばかりだが、「誰が1番優れたピッチャーなのか」はファンの中でも頭を悩ませる問題のひとつだろう。

 今回は、これまでのあだち作品に登場した投手キャラのすごさを振り返り、勝手ながら「最強ピッチャー」を選定したい。

■素質が光る『タッチ』の上杉達也

 まずは、あだち充氏の代表作『タッチ』の上杉達也だ。同作は1981年から1986年まで連載された。連載が盛り上がる頃はちょうど、高校野球でPL学園「KKコンビ」が伝説的な活躍をしていた時期である。

 ピッチャーとしての特徴は、弟の和也と比較して語られる。ともに速球派だが、和也は制球力が高くキレで勝負するタイプ。対して達也は制球力に難はあるが球威に優れているとされる。変化球はカーブとチェンジアップを投げることができるが、基本的にはストレートで勝負するタイプだ。

 最高球速に関しては漫画では表記がない。だが、アニメオリジナル作品の『タッチ Miss Lonely Yesterday あれから、君は…』で甲子園で152キロを記録したという描写がある。しかし、甲子園にスピードガンが設置されたのは1992年のため、客席からの測定と思われる。あくまでも参考記録と捉えるのが妥当だろう。

 だが達也の投げるストレートが凄まじいものであるのは間違いない。ライバルたちが認めているのはもちろん、キャッチャーの松平孝太郎がミットを構えるのに恐怖を感じるほどだ。

 成績は3年の夏、甲子園大会優勝にチームを導いている。特筆すべきポイントとしては達也が野球を始めたのが高校1年の途中からだということだろう。さらに中学時代の達也が帰宅部で運動をしていなかったことを考えると驚異的な才能だと言わざるを得ない。ピッチャーとしての能力はともかく、素質だけを考えると最強は達也かもしれない。

■まさに怪物…『H2』の国見比呂

 続いては1992年から1999年まで連載、『H2』より国見比呂だ。連載の終盤時期には実際の高校野球で横浜高校の松坂大輔氏が「平成の怪物」として大活躍していたが、漫画での比呂もまた「怪物」そのものだ。

 中学時代から剛速球で有名だった比呂は、夏の北東京大会で見せた最速152キロのストレートに、140キロのフォーク、それにカーブやチェンジアップなどタイミングを外す球種も投げることができるピッチャーだ。ライバルの橘英雄との勝負に備えて習得した、キャッチャーの野田が捕球に困るほどのキレと球速を誇る高速スライダーも強力な武器となった。

 同じくストレートを武器とする上杉達也と比べると、器用なタイプと言えるだろう。さらにコントロールとスタミナも抜群。守備に関しては、野田から「投げ終わった後の比呂は、超一流の内野手」と評価されている。バッティング、走塁に関しても非凡である。

 最高成績は3年春の選抜で甲子園優勝を果たしている。物語が3年夏の甲子園決勝前で終わっているため、結果は不明だが甲子園春夏連覇(横浜高校は1998年春・夏に連覇)している可能性もある。

 時代が違うこともあるが、ピッチャーとしてのスペックを考えると達也より比呂のほうが優れていると言える。もちろん野球を始めて2年で甲子園優勝投手になった達也も才能では引けを取らないだろう。比呂は最終話でメジャーリーグ挑戦を匂わせる発言もしている。それも納得の超高校級ピッチャーだ。

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