■上官への忠誠とコレクター魂を忘れない男

 マ・クベを語るうえで外せないのは、やはり「ツボ」の存在だろう。アニメの第16話「セイラ出撃」でのマ・クベ初登場のシーンでは、顔よりも先に白いツボを指で突いて音を鳴らす描写があり、「いい音色だろ?」と満足げにつぶやく。

 彼の執務室の棚には、他にも多数のツボが飾られており、まるで骨董品コレクターの部屋のようだった。戦時中の執務室にこれだけのコレクションを飾って楽しめるのは、ある種変わり者でもあるし、絶対の自信のあらわれにも思える。

 また、ガンダムとの一騎討ちに敗れたマ・クベは、最後に「あのツボをキシリア様に届けてくれよ…あれは、いいものだ…!」と腹心の部下ウラガンに言い残して戦死。キシリアへの忠誠心とツボへの愛着を示した、印象深い言葉といえるだろう。

 ちなみに、第16話に登場したマ・クベお気に入りの白磁のツボは、「マ・クベの壺」という名称で実際に販売された。その価格は41040円(税込)で、ファンの間でもニッチな人気があるのがうかがえる。

 マ・クベは、多少詰めの甘い部分があり、部下に対して冷酷な判断も下しているが、それも大局を見据えてのこと。敬愛する上官のキシリアにはもっぱら忠実で、総じて優秀な軍人だったといえるのではないだろうか。

 もっといえば、彼の計算高い性格や狡猾な部分は、平時の政治闘争にこそ向いていそうな気もする。戦時下でなければ、キシリアを熱烈に支持する頭の切れる忠臣として、さらに暗躍していたのかもしれない。

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