「ツボだけの男じゃない!?」 指揮官からパイロットまで器用にこなす『機動戦士ガンダム』屈指の知略家「マ・クベ」という男の非凡さの画像
「フルカラー版 機動戦士ガンダム THE ORIGIN 16巻」(KADOKAWA)

機動戦士ガンダム』には、アムロやシャアをはじめ、数多くの魅力的なキャラクターが登場。子どもながらにカッコいいと感じたキャラもいれば、大人になってから良さに気づいたキャラもいることだろう。

 たとえば、ジオン軍の指揮官「マ・クベ」も、大人になってからその魅力に気づかされた軍人のひとりだ。死に際に彼が発した「あれは、いいものだ……!」というセリフは、そのシーンを覚えていない人でも聞き覚えがあるのではないだろうか。

 子どもの頃は単なる悪役にしか見えなかったマ・クベの人物像を、3つの観点から掘り下げてみよう。

■戦局を動かした優秀な策謀家

 マ・クベが初登場したときは、オデッサ基地の司令という立場であり、キシリア配下のエリート軍人である。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で、シャアは「私はお前と違ってパイロットだけをやっているわけにはいかん」とアムロに言ったが、マ・クベの立場はまさにこれ。基地司令という要職に就き、大局的に物事を考える指揮官だった。

 地球連邦軍のエルラン中将を内通者にして利用し、連邦のオデッサ作戦の情報を得ていたのも彼の功績だ。しかし、エルランが連邦内部で疑われ、オデッサ作戦の決行直前に逮捕されたのは誤算だったはず。

 そして連邦のオデッサ奪還が濃厚になると、マ・クベは条約違反を承知の上で水素爆弾を使用(結果的にガンダムに阻止された)する。水面下で策謀を巡らせながら、目的を達成するためには手段を選ばない男なのだ。

 結局、マ・クベは宇宙に逃れることになるが、彼が「ジオンはあと10年は戦える」と豪語した通り、これまで彼が送った資源に大きな意味があったのは疑いようがない。マ・クベは資源調達の重要性を誰より理解し、それを実行してみせた指揮官だった。

■パイロットとしても非凡なセンスを披露

 冷酷な策謀家として知られるマ・クベだが、自らパイロットを務め、前線でガンダムと対峙する場面もあった。試作モビルアーマーのアッザムでガンダムと戦ったときは、特殊武装「アッザム・リーダー」でガンダムを追い詰めている。

 そして第37話「テキサスの攻防」では、マ・クベ専用のモビルスーツ「ギャン」でガンダムと一騎打ちを果たす。

 MSパイロットとしてのマ・クベも、いろんな策を巡らして勝利を目指した。コロニーの扉に爆弾をしかけ、進入するガンダムを攻撃。さらにギャンのシールドから放つ「ニードル・ミサイル」の影に、無数の浮遊機雷「ハイド・ボンブ」を放ち、動きをけん制する。

 そのうえガンダムのビーム残量を枯渇させ、得意の接近戦に持ち込むという計算高さを見せた。

 ここまでマ・クベの思惑通りに事が進みながら、ニュータイプとしての素養を開花させつつあったアムロの才能が想定を上回る。その結果、ギャンが得意な接近戦でもアムロのガンダムに敵わず、マ・クベは壮絶な戦死を遂げたのである。

 もしも経験を積む前のアムロとギャンで戦っていたら「あるいは……」と思わされる名勝負だった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3