■爆発音でかき消された最期の言葉

 最後は『機動戦士Zガンダム』に登場するティターンズのモビルスーツパイロット、ジェリド・メサのセリフ。彼が物語の終盤で、宿敵である主人公のカミーユ・ビダンに敗れて爆死した際の叫びは、「カミーユ、貴様は俺の……!!」というものだった。

 これまで、ジェリドとカミーユは親や恋人、師匠というお互いの大切な人の命を奪い合うという、まさに因縁としかいえない相手同士だった。しかし、物語の終盤で憔悴しきったカミーユは、ジェリドを前にしてなお、これ以上人の死を見たくないと彼を撃つのに躊躇するシーンもあった。

 お互いの心にはもうどうやっても埋められないものがあったようで、最後の戦いにも両者は同じ気持ちで向き合っていない。そもそもカミーユはこの時点で完全にニュータイプとして覚醒しており、もはやジェリドなど敵ではなかった。

 最後までカミーユを恨み続けたジェリドの死に際のセリフは、まるで呪詛のよう。なお、このセリフについては、富野由悠季監督がDVD同梱の資料集で、「俺のすべてを奪った」と続く予定だったと明かしている。爆発音でかき消されてしまったことによってジェリドの無念がより伝わる、彼の生き様を振り返りたくなる演出だ。

 なお、2005年から2006年にかけてシリーズ公開された劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation』では、そもそもアニメ版ほど2人の間に因縁がない。死亡シーンにほぼ変化はないが、アニメ版では恨みのこもっていた最後の言葉は、ただの悲鳴となっている。それもそれで悲しい気がするが……。

 いずれも真意の分からない「意味深な死に際のセリフ」の数々。しかし、その背景を深読みするだけでも、キャラクターに深みが増す気がして楽しくなってしまうものだ。

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