■思い詰めた末に選んだ、まさかの決断

 最後に紹介するのは、オスカルを愛しすぎたアンドレが、あってはならない方向に突き進みかけたエピソードだ。

 オスカルの結婚話が盛り上がるなか、貴族ではないアンドレの焦りは計り知れないほど大きく、精神的にもかなり追い詰められていた。

 するとアンドレは、恋い焦がれるオスカルと生きて結ばれることが叶わぬのなら……と、オスカルと自分のワイングラスに“毒”を入れ、いわゆる無理心中を試みるのだ。

「苦しませはしない」「だから…許してくれ…」と言うアンドレの身勝手な行動は、オスカルの気持ちを完全に無視した蛮行である。

 また、アンドレの恋敵ジェロ―デルが比喩に使った恋愛小説をきっかけに、「死によってしか結ばれない…」との考えに至ったのも皮肉な話である。

 だが、オスカルが命がけで救ってくれたときの誓いを思い出して我に返ったアンドレは、寸前のところでオスカルの毒入りワイングラスを叩き落とし、涙を流して猛省した。

 今回紹介した以外にも、オスカルを愛するがあまり、嫉妬して暴走したアンドレのシーンは多い。ジェローデルの言葉に激怒して、顔面にショコラをぶちまけたり、オスカルを守るためとはいえ、大恩あるジャルジェ将軍に剣を突きつけたりと、大貴族相手でも怯まず、やりたい放題である。

 だが、そんな愛深きアンドレだからこそ、遠回りをしながらも、オスカルはその大きな愛に応えたのかもしれない。2025年新春に公開予定の劇場アニメでは、彼の“激情”がどこまで表現されるのかも注目したい。

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