■秀逸なギミックを実現した映像美!

 同じく、圧巻の映像美と壮大な音楽で話題になったのが、サンライズ制作のアニメ『天空のエスカフローネ 』(1996年より放映)。女子高生・神崎ひとみが、若き王・バァンとの出会いをきっかけに、転移した異世界ガイアで戦いに巻き込まれていくというストーリーだ。

 中世をほうふつさせる異世界を舞台に、ドラゴン、天使(竜神人)、騎士、王族、獣人、運命を操作する科学力など、ロマンチックな設定が詰まったファンタジー作品である。

 また、実はヒロインは特殊能力の持ち主で、周囲にはさまざまなタイプのイケメンがいたり、世界崩壊の危機が盛り込まれていたりと、昨今の女性向け転生作品のようである。

 そのうえサンライズ制作のアニメのためかメカの描写にも力が入れられており、真骨頂が第2話「幻の月の少女」で描かれた、エスカフローネの起動シーンだ。

 バァンが「竜退治の儀」に成功した証をかざすと、荘厳な音楽をバックに騎士のようなマント姿のエスカフローネが目覚める。胸もとのハッチが開き、バァンがコックピットに乗り込むのだが、このときの描写がまさに圧巻。

 足もとは金属製の可動式ペダル、腕には袋状の筒に包まれた操縦かん。そして幾重ものゼンマイやレトロ調のギミックが、驚くほどなめらかに動くのである。

 1分ちょっとしかない短いシーンではあるが、何度観ても飽きることのない映像クオリティの高さに、30年近く経った今でも驚かされる。

■いつもと違う演出に思わず「ゾクッ」

 最後は『デジモン』シリーズのテレビアニメ第1作目の『デジモンアドベンチャー』(1999年より放映)から。本作はデジタルワールドへと迷い込んだ7人の子どもたちが、デジモンと友情を育みながら冒険する物語だ。

 日曜・朝9時というキッズタイムに放映されながら「実親との死別」「両親の離婚」「母親との確執」など、かなりシビアな内容が盛り込まれていた作品。だが友だちと衝突し、無力感にさいなまれつつも、さまざまな試練を乗り越え、成長していく子どもたちの姿に感動させられる。

 全54話のエピソードのなかで、取り上げたいのは第21話「コロモン東京大激突 !」の回だ。

 次元の亀裂に取り込まれ、元の世界に戻った太一とアグモン(コロモン状態)。自宅のマンションに帰ると日付はまったく経過しておらず、妹・ヒカリがデジモンを知っているなど、違和感だらけの世界だった。

 明暗がくっきりした不穏な情景描写、そして背後に流れる『ボレロ』の音に得体の知れない不安をかき立てられ、不思議な雰囲気を醸し出すヒカリの様子も不気味……。慣れ親しんだ日常のなかにある「非日常の演出」に、思わずゾクリとした視聴者も多かったことだろう。

 なお、この回で使用された『ボレロ』の曲は、テレビアニメに先駆けて公開された映画第1作『デジモンアドベンチャー』にも使用されている。その映画作品の監督を務めたのは細田守氏であり、この21話では演出を担当していた。

 このほかにも、アーバインとコマンドウルフの絆に涙した『ゾイド ZOIDS』の第48話「黒い稲妻 」の回、イケメンの蔵馬が変顔を披露した『幽遊白書』第69話「禁句(タブー)のパワー!蔵馬の頭脳 」の回など、90年代のアニメ作品には印象深いエピソードが目立つ。

 皆さんにとって、何度でも見返したくなる「神回」といえば、どんな作品を思い出すだろうか。

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