『仮面ライダー』シリーズには、人類の敵となり、主人公である仮面ライダーと戦う怪人たちが登場する。恐ろしい怪人が多い反面、なかには「いいヤツだった」と思わず感じてしまうキャラクターもいるのが面白いところだ。
彼らはただ悪役として終わるのではなく、その純粋な心や人間らしい感情が描かれ、視聴者に深い印象を残す。そこで今回は『仮面ライダー』シリーズに登場した、“いいヤツ”だった怪人たちを振り返り、その魅力的なキャラクターや悲しい結末について紹介していきたい。
■ネイティブに変えられた少年『仮面ライダーカブト』擬態天道
まずは2006年から放送された『仮面ライダーカブト』から、つくづくかわいそうな怪人「擬態天道」を紹介したい。
擬態天道とは、水嶋ヒロさん演じる主人公・天道総司に擬態した怪人“ネイティブ”だ。姿形も天道そのままで、ダークカブトにも変身することができるが、どことなく幼さを感じさせる。それもそのはず、彼は対ワーム秘密組織・ZECT(ゼクト)に拉致された元少年で、実験によりネイティブ化し天道に擬態させられたZECTの被害者でもあったのだ。
その後、擬態天道は本作のヒロインであり、同じネイティブでもある日下部ひよりとともに時空の彼方へと飛ばされてしまう。ひよりと行動を共にするうちに彼女のことを守る兄として生きようとするが、結局、ひよりは本物の天道とともに元の世界へと帰っていくこととなる。
「嘘だろ!ひより」と言って置いていかれる擬態天道の姿は、見ていて非常に切ないものがあった。その直後「壊してやる…こんな世界」と暴走してしまったが、それも仕方がない気すらしてしまう。
その後、擬態天道は再びZECTに捕まり、最終49話「天の道」“全人類ネイティブ化計画”に利用されることになる。その計画はカブトらの活躍により阻止され、擬態天道も助かったと思われたが、最終的には本作の黒幕であった根岸を道連れに炎のなかへと消えていった。「頼んだよ僕たちの世界を」という最期の言葉が非常に悲しかった。
エンディングでは、ネイティブであるひよりが人間社会で幸せに暮らしている様子が見られた。実験によりネイティブと変えられた擬態天道だが、彼にもそんな幸せな未来があったのではないかとどうしても想像してしまう。
■人間の生活を愛したオタクな怪人『仮面ライダードライブ』ロイミュード072
2014年から放送された『仮面ライダードライブ』第20話に登場した怪人「ロイミュード072」も印象的なヤツだった。
竹内涼真さん演じる仮面ライダードライブ・泊進ノ介が所属する警視庁特状課、その客員として捜査に協力する西城究は、ネットワーク研究家であり、オタク界のカリスマとしても知られる人物である。
そんな究に擬態したのが、ロイミュード072だった。擬態後、すぐに究を殺そうとしたが「アニメの最新話を見せてくれ! 見れなきゃ死んでも死にきれない」という彼の頼みを聞き入れ、一緒にアニメを鑑賞する。そのアニメに猛烈に感動した究とロイミュード072は意気投合し、その後お互い入れ替わりながら人間の生活を満喫するようになる。しかも、特状課にもときどき出入りしてしまうのだから驚きだ。
その後、特状課によって捕まったロイミュード072だったが、本当にいいヤツだと分かってもらえて、進ノ介とも分かち合えそうになる。
だがその直後、敵幹部メディックの触手に貫かれ致命傷を負ってしまうロイミュード072。究を悲しませまいと「本物の西城究には 僕が大暴れしてキミに倒されたって言っといてよ」と言葉を残し、抱える進ノ介を振りほどいて爆死した。
本作には、チェイスというロイミュードでありながら正義の心を取り戻し活躍したライダーもいただけに、ロイミュード072の無念の最期は悔やまれる。