■人気を集めた『とんでぶーりん』に『ウェディングピーチ』

 また、1994年放送の『愛と勇気のピッグガール とんでぶーりん』も当時大きな人気を集めた作品で、池田多恵子氏による原作漫画は『ちゃお』(小学館)で連載されていた。

 ふつう、魔法少女ものの作品といえば、主人公の普通の少女が変身し、とびきりかわいい衣装に身を包んで悪を倒すというイメージがある。しかしこの作品の主人公・国分果林は「ぶ〜りん」に変身すると、およそ2頭身でお腹に「ぶ」の文字が書かれたブタの姿になってしまうのだ。

 その姿を恥ずかしく思う一方で、憧れの存在・水野光一は、果林ではなくぶ〜りんにひかれてしまうという始末。しかしぶ〜りんは正体がバレてしまうと一生元に戻れなくなるというジレンマを抱えており、全編を通してコメディチックに物語が進んでいく。

 オープニング主題歌のタイトル通り「愛はカッコわるい」物語。しかしそんな果林の恋路をついつい応援したくなったものだ。

『ぶーりん』と対照的なのは、1995年放送の『愛天使伝説ウェディングピーチ』。こちらも『ちゃお』で連載されていた富田祐弘氏、谷沢直氏の漫画とのメディアミックス作品で、女の子の憧れだった「花嫁さん」をテーマにした意欲作だ。

 ウェディングピーチらの変身フォームはウェディングドレスと「お色直し」の戦闘フォームの2種類で、衣装のモチーフ通り、恋愛がストーリーのメインとして描かれる。

 主人公の花咲ももこの恋愛のみでなく、ともに変身する2人の少女の恋愛模様もしっかりと描かれており、その恋愛には悲しい運命も……。身分違いの恋は、視聴者の少女の心を熱くさせた。

 ややマイナーながら、それぞれに当時の少女を夢中にさせた魅力があった。90年代の魔法少女作品にはたくさんのアイデアと少女の憧れが詰まっていた。

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