■命を賭して幼き政の命と心を救った「紫夏」

 戦局どころか、中華の歴史を変えたかもしれないのが紫夏だ。

 嬴政が自身の過酷な幼少期のことを語った回想シーン。趙国闇商人の腕を見込まれ、幼き政を秦国に帰還させるという依頼を受けたのが、女頭目の紫夏だった。

 敵国の世継ぎを馬車に乗せての脱出は困難を極めたが、紫夏は闇商人としての力とここ一番での度胸の良さで乗り切ってみせる。

 しかし、味方との合流地目前で趙の騎馬隊に追われることになった政たち。亜門をはじめここまで護衛してくれた仲間たちが次々と命を落としていくなか、紫夏も命を賭して政を守り抜く。槍と無数の矢を全身に受けながらも政を守り抜いた紫夏の後ろ姿は、悲しくも非常に印象深い名シーンとなった。

 紫夏は政を秦国まで送り届けただけでなく、彼の心を救った女性でもある。仮に何か別の手段を使い秦国に戻っていたとしても、彼女との出会いがなければ、政は闇を抱えたまま王になっていた可能性もあるだろうし、もはや“中華統一”という途方もなく大きな夢を持つこともなかったかもしれない……。

 そう考えると、そもそも『キングダム』という壮大な物語は、紫夏という存在があったからこそ始まったものではないかとも思えてしまうのだ。

 

 今回は『キングダム』に登場する女性たちの活躍が戦局を変えた名シーンを紹介してきた。本作は、男性キャラたちの戦闘が目立つ作品であるが、女性キャラたちも大いに活躍し、戦局を変え、時には歴史をも大きく動かしていた。

 彼女たちがいなければ、『キングダム』の物語もまた異なるものとなっていただろう。今後も登場するであろう美しくたくましい女性キャラ。その動向に注目していきたい。

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