現在、シリーズ最終章、『キングダム 大将軍の帰還』が大ヒット上映中の、原泰久氏による『キングダム』。本作は古代中国の春秋戦国時代を舞台にした壮大な物語であり、数々の激しい戦闘シーンが描かれている。
その魅力の一つは、男性キャラクターだけでなく、女性キャラクターたちもまた重要な役割を果たし、物語に深みを与えている点だろう。勇敢で知略に満ちた行動が戦局を大きく変える場面も多く、彼女たちがいなければ『キングダム』という物語はまた異なるものになっていたに違いない。そこで本記事では、『キングダム』女性たちの活躍が戦局を変えた名シーンを紹介していきたい。
※以下には、コミックス『キングダム』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■山の民を率いて駆けつけ、絶体絶命の秦国を救った「楊端和」
本作の女性キャラを語る上で、“山の民”の女王・楊端和は欠かせない。作中でも屈指の強さと美貌を兼ね備えている楊端和は「王都奪還編」でも大いに活躍し、現在では秦国六大将軍にも名を連ねている人物だ。
そんな楊端和の「戦局を変えた名シーン」といえば、やはり「合従軍編」の最終盤、蕞(さい)の攻防戦が有名だろう。
函谷関の戦いの裏で、李牧は別働隊を率いて秦国王都・咸陽に迫ろうとしていた。そして秦国の最終防衛ラインとなったのが、王都手前の城・蕞である。主人公の信が率いる“飛信隊”、さらには秦国大王である嬴政も自ら咸陽から蕞に入り、民を奮い立たせこの城をなんとか死守する。しかし7日目を迎え、それも限界に達しようとしていた。
城門が破られ、敵騎馬隊が城内になだれ込む……そんな絶体絶命に現れたのが、楊端和率いる山の民だった。
「全軍 血祭りだ」という楊端和の号令で山の民たちが一斉に丘を駆け下り、李牧軍に急襲するシーンは、読者全員がシビれただろう。彼女を中心に、バジオウにタジフら屈強な山の民たちの姿がなんとも頼もしかった。
さすがの李牧もこのタイミングでの敵援軍の出現は予想外のことであり、蕞からの撤退を余儀なくされる。そしてそれは同時に、長く繰り広げられた合従軍の失敗を意味するものだった。楊端和の活躍が蕞、ひいては秦国の大ピンチを救ってみせたのだ。
■“無手”をひっくり返した軍師「河了貂」
「黒羊丘編」で活躍を見せたのが、飛信隊の女軍師・河了貂だ。
中華統一のため、秦国が趙国へ侵攻した“黒羊丘の戦い”。飛信隊は桓騎軍と合流し、右翼を任されることになった。しかし、一日目は黒羊の地形を巧みに使って仕掛けてくる趙軍に翻弄され、飛信隊は大きく出遅れることとなってしまう。
初日の失態を挽回すべく軍を進める飛信隊だったが、対岸に陣取った趙軍に遭遇する。このように対岸に陣取られた“渡河の戦い”は、野戦のなかで一番の難題である。さらに舟がない場合には突破不可能な“無手”の状況であると、河了貂の師・昌平君も述べていたほどだ。
しかし、河了貂は諦めなかった。「そこに道を切り開くのが飛信隊の軍師だ!!」と、策を見出し決行。そして、信と副長・渕の活躍によって不可能と思えた渡河を見事成功させるのだ。
その後、勢いに乗った飛信隊は前線を押し込み、黒羊丘の戦いにおける敵の総大将・慶舎の討ち取りを果たすこととなる。黒羊丘編の渡河は、軍師・河了貂の本領を発揮する名シーンとなった。