■子ども向けのかわいらしい作品だけではない?『崖の上のポニョ』半魚人姿のポニョ
主題歌の親しみやすさと、年齢が幼い子どもが主人公とあって小さな子どもにも愛されている『崖の上のポニョ』(2008年公開)。
魚の女の子・ポニョと、心優しい男の子・宗介の出会いから予想もしない大冒険がはじまる本作。宮﨑駿監督の意向により、原点に立ち返りCG技術ではなく手描きで作画を進めた作品のため、いままでにない素朴さを感じることもできる。しかし、生きているかのように動き回る波の描写については、手描きであることを忘れてしまうほど秀逸だった。
一見するとかわいらしい作品で、「子ども向け」と感じてしまう本作だが、見る人によっては「怖い」という意見も多い。大嵐のなか幼い子どもを残して職場に向かう母親や、船よりもはるかに大きな女性・グランマンマーレの存在、そして魚が津波となって町をのみこんでしまうなど、見方によっては怖いシーンも確かに多い。
なかでもゾクッとしてしまうのが、半魚人姿のポニョだ。ポニョはもともと魚の女の子だったが、魔力で人間へ姿を変えて宗介のもとへやってくる。しかし魔法によって人間に変身しているポニョは、魔力が弱くなると半魚人のような姿になってしまうのだ。
かわいらしい女の子がギョロッと目玉の大きなカエルのような姿になり、それまでとはかけ離れた姿に……。この変貌ぶりを子どものころに見て、怖くて忘れることができないなんて人もいるほどインパクトのある描写となっていた。
子どものときに見て怖かった記憶が鮮明に残っている人も多い、これらのシーン。多くの世代に愛される作品だからこそ、見る人の心に深く残るのもジブリ作品ならではといったところだろう。
もちろん、怖いだけで終わらないのがジブリ作品だ。一瞬のシーンでさえ、監督の熱い想いが込められている名作たち。ぜひじっくりと振り返ってみてはいかがだろうか。