■暗闇から誰か来る…「亡霊トンネル」

 最後はタイトルからして気味の悪い「亡霊トンネル」のエピソードを紹介したい。物凄い轟音とともに、音を吸収しないトンネルに入りこんで止まってしまった999号。すると暗闇からイローゼという女性が現れ、鉄郎に対し我が家に来るよう涙ながらに誘ってくる。

 仕方なくイローゼの家に上がった鉄郎だったが、出されたコーヒーやサンドイッチはいずれも鉄化プラスチックなどで出来ていて歯を傷めてしまう。イローゼのもてなしはすべて意地悪く、しかも999号を閉じ込めたのも彼女の仕業だと知った鉄郎は激怒。

 その場でアンドロイドであるイローゼの体を破壊し、トンネルを操る機械を操作したことにより999号は無事に脱出に成功するのであった。

 実はイローゼは昔、アンドロイドを造った人の亡霊であった。その人物は人の嫌がることばかりをして迷惑をかけ続け、最終的に人々に嫌われ自殺したのだという。

 しかし自分の心だけはトンネルに置いてきたため、亡霊となったイローゼが永遠に訪れる人々に嫌がらせをし続けるのである。イローゼという姿を借りて怨霊のごとく嫌がらせを続ける姿に、空恐ろしさを感じるエピソードだ。

 

 このように『銀河鉄道999』には、幽霊が登場するような恐ろしいエピソードも多々ある。しかしいずれの話もただの怪談では終わらず、読み終えたあとはいろいろと考えさせられることが多いのだ。

 暑い夏も終わりに近づくいま、『銀河鉄道999』に登場する怖いエピソードを読み返しつつ、本作が訴える人間の本質や欲望、生と死といったテーマをあらためて考えてみてはいかがだろう。

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