■シュールな世界観とじわじわくる怖さ『ピカピカのぎろちょん』
『ピカピカのぎろちょん』は1968年にあかね書房より発売され、絶版を経て2005年に復刊された絵本だ。子どもの頃にこの絵本を読んだ人は、言葉にできない不安感や不思議な感覚を抱いたはず。そして、今でもその感覚が記憶に残っているのではないだろうか。
主人公は小学生のアタイと弟のマア。2人の住む街はある日突然封鎖され、テレビも見れず学校も休みになってしまう。親に聞くと「ピロピロのせい」との答えが。続いて噴水広場にギロチンが設置され、反ピロピロとの戦いが勃発したなどの噂も駆け巡る。
好奇心旺盛なアタイはギロチンを真似た小さな「ぎろちょん」を作り、友だちと野菜を嫌いな人に見立てて死刑ごっこをする。その後ピロピロは突如終焉を迎え、バリケードは撤去された。しかし、噴水広場は黒い塀と有刺鉄線で囲まれ、何も見えなくなっていたのだった。
子どもは大人が隠す真実を知りたがり、手に入れた情報で小さな世界を確立する。今作は、そんな閉鎖的な空間で生まれた子どもの残酷性が絶妙なタッチで描かれる。
「世の中が変わる」らしいピロピロの正体は最後まで明かされない。クーデターや革命なども想像できるが、死体や軍隊も出てこず何もわからないのだ。このもややもした余韻もまた今作の魅力である。
■残酷描写のオンパレードに圧倒される『絵本 地獄』
千葉県旧安房郡の延命寺に所蔵されている地獄絵巻を元に描かれた『絵本 地獄』(風濤社)。1980年に発売されたこの絵本が、「しつけに役立つ」と再注目されている。
こちらは、地獄を見た五平の回想録。ある日鬼から死を告げられた五平は、閻魔大王の元に連れていかれ、裁きによって針地獄行きとなってしまう。するとお地蔵様が現れ、生前の善行を理由に慈悲を求めた。閻魔大王は五平に恩赦を与え、「悪い行いを重ねれば死んだ後どのような目にあうか地獄を見て周り、生き返って皆に伝えよ」と伝えるのだった。
ここからは恐ろしい地獄絵図がお目見え。ページをめくると、釜茹で、火あぶり、四肢切断と生前の悪行によって振り分けられた地獄で苦しむ、血まみれの亡者の姿が目に飛び込んでくる。
賽の河原には、石を積み上げては鬼に壊される子どもたち。幼い子どもの苦しむ姿に胸が痛むが、五平はここで「子どもたちよ、いのちをそまつにするなよ!」と強いメッセージを発している。
強烈な地獄絵巻を通して死の怖さを考え、命の大切さを学べる今作。ただ、子どもがショックを受ける可能性もあるので、フォローしつつ教訓を伝えてみてはいかがだろうか。