■すべての元凶?『鬼滅の刃』鬼舞辻無惨を鬼にした医者
続いては吾峠呼世晴さんによる『鬼滅の刃』(集英社)でのやらかしだが、これは話の根幹に関わってくる問題である。何故なら、それさえなければ鬼の生みの親である鬼舞辻無惨の存在もなかったかもしれないからだ。
無惨は最初から鬼だったわけではない。平安時代、おそらく貴族として生まれた無惨は幼い頃から病弱で、二十歳までは生きられないと余命宣告を受けてしまう。
そんな無惨の病を治すために尽力したのが謎の「善良な医者」。彼は自ら開発した薬を無惨に投与したが、一向に回復する気配がないどころか病状は悪化していった。それに苛ついた無惨は医者を殺してしまう。無惨が短気なのはこのころからだったのか……。
そして、医者を殺した後に薬の効果が現れ、病を克服して強靭な肉体を手に入れることができた。ただし、その代償として太陽の下では生きられず、人の血肉を食って生きていく鬼となってしまった。
医者の薬は「青い彼岸花」と呼ばれるもので、材料がおそらく青色の彼岸花だということ以外、何も情報がなかった。そのため、無惨は太陽を克服するためには「青い彼岸花」が必要と考え、長年追い求め続けたのだ。
もし、あの時に医者が無残に薬を投与していなければ、恐らく鬼という存在は生まれなかっただろう。
あの医者は、医者として純粋に無惨を治したかったのか? それとも薬の効果を試すために無惨を利用したのか……? その真意は分からない。
■よけいなことはするな…『ジョジョの奇妙な冒険』忠告を無視した広瀬康一
最後は、荒木飛呂彦さんによる『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)でのワンシーンから。それは、第4部で吉良吉影により矢安宮重清が殺害され、残されたボタンを手がかりに空条承太郎と広瀬康一が「靴のムカデ屋」を訪れた時に起こる。
この時吉良は既に来店していて、スタンドである「シアーハートアタック」を残していった。そのため承太郎たちはこのスタンドと戦うことになったが、承太郎は「犯人(ヤツ)は追うな 君は『エコーズ』で自分の身を守ることだけを考えていればいい」「よけいなことはするな」と康一に忠告する。
しかし、康一はそれを無視して吉良を探すために遥か上空へとスタンドを放つ。これによって自分の身を守れなくなり、その時にスタンド攻撃を受けることになったのだ。
これにすぐさま承太郎が反応して、自らが囮になって康一への攻撃を回避できたが、承太郎は瀕死の重傷。もし、この時に承太郎が深い傷を負っていなければ、吉良をすぐにでも追いかけて倒していた可能性もあるだろう。
すると、川尻浩作や辻彩が殺される事態も避けられ、その他の犠牲者を出さずに済んだかもしれない。
しかし、承太郎は康一に対して怒ることはなく、迷わずかばっていたのでよほど康一を気に入っているのだろう。最後にも「この町に来て君と知り合えて本当に良かったと思ってるよ…」と話すほどだ。承太郎の康一愛が凄い……。
今回紹介したやらかしキャラが、もしやらかさなかったら……そんな風に想像してみると、意外とつまらない展開になってしまうかもしれないとも思える。
良くも悪くも、やらかし行為は物語を盛り上げるための要素のひとつなのだろう。ある意味作品に欠かせない「余計なことをしたキャラ」の活躍(?)に注目してみると、作品がもっと楽しめるかもしれない。