スタジオジブリ作品といえば、キャラクターの声に俳優を起用することも少なくはない。なかには一度観ただけでは気付きづらい意外な俳優が登場していることもあり、それが話題となることもしばしばだ。今回はジブリ作品で活躍を見せた、男性俳優たちのエピソードについて紹介していこう。
■初めての声優がまさかのジブリ作品!? 『崖の上のポニョ』長嶋一茂
2008年に公開された『崖の上のポニョ』は、主人公の少年・宗介と、人間になりたいと希望を持つ魚の少女・ポニョの触れ合いや奮闘が描かれた現代ファンタジー作品だ。
宮崎駿さんが原作・脚本・監督を務めており、絵本のようなあたたかなタッチで描かれた描写の数々が観る者を強く惹きつけ、藤岡藤巻さんと大橋のぞみさんが歌うポップで可愛らしい主題歌も大ヒットとなった。
そんな本作では宗介の母・リサ役に女優の山口智子さん、ポニョの父・フジモト役に所ジョージさん、ポニョの母・グランマンマーレ役に天海祐希さんなど、数々の有名俳優が声優として出演している。
そのなかでも意外な活躍を見せたのが、宗介の父・耕一役の長嶋一茂さんだろう。長嶋さんは、“ミスタージャイアンツ”と呼ばれた有名選手・長嶋茂雄さんの息子で、父同様に野球選手時代を経て、現在はタレントとして活躍している。
そんな長嶋さんだが、これまで“声優”をつとめた経験がなく、なんと本作が声優デビュー作品となった。長嶋さんはアニメ映像のキャラクターの口の動きに自身のセリフを合わせるアフレコに苦戦したそうだが、その際、宮崎監督に「一茂くんの間合いでしゃべってくれ。映像をこっちが合わすから」と、提案されたことを明かしている。
当時を振り返り、“迷惑を掛けた”と気にしていた様子の長嶋さんだったが、結果、宗介を溺愛する優しくもたくましい父親役を見事に演じきっており、本作になくてはならないキャラクターとなっていた。
■さりげなさ過ぎるにもほどがある?『千と千尋の神隠し』安田顕
2001年に公開された『千と千尋の神隠し』は、八百万の神々の世界へ迷い込んでしまった少女・千尋が、数々の出会いを経て成長していく姿を描いた和風ファンタジー作品だ。
公開後、瞬く間に大ヒットを記録した本作は、米国アカデミー賞長編アニメーション賞、ベルリン国際映画祭金熊賞といった数々の名誉ある賞を受賞している。
本作にも数多くの俳優が出演しているが、脇役でありながらその名演技で大きな存在感を見せつけたのが、番台蛙役を演じた大泉洋さんだろう。“薬湯の札”をもらおうとする主人公・千尋を突っぱね、一方で客にはにこやかに接するという“嫌な奴”っぷりを、短い出演時間でありながら見事に表現していた。
だが、実はこの大泉さんにゆかりのある俳優がもう一人、あまりにも意外な役柄で登場していたことをご存じだろうか。
その俳優とは、大泉さんと同じ劇団ユニットTEAM NACSに所属し、バラエティ番組やドラマ、映画でも共演している安田顕さんだ。安田さんは作中、湯婆婆に会いに行く千尋とともにエレベーターに乗り込み、わずかながらも彼女を手助けした“おしらさま”なる神様として出演していた。
大きな大根のような見た目をしたおしらさまだが、とくに明確な言葉を喋るシーンはなく、かすかに唸り声をあげているのみ……。そのため、このおしらさまを演じているのが安田さんだと気づくのは、よほどのファンでも至難の業だっただろう。個性派俳優のまさかの配役に、驚いてしまった人も少なくないかもしれない。