■あのレジェンドサッカー漫画も五輪を舞台に戦っていた『キャプテン翼 ライジングサン』

 サッカー漫画の金字塔である、高橋陽一さんの名作『キャプテン翼』。本作でも、2013年から2019年にかけて『キャプテン翼 ライジングサン』というタイトルで、U-23オリンピック日本代表の活躍が描かれた。

 吉良耕三五輪代表監督の元に集まった、主人公・大空翼を筆頭とする黄金世代。アジア予選を勝ち抜いたのち、架空のマドリッドオリンピックでの試合模様が描かれている。

 グループリーグでオランダ、アルゼンチン、ナイジェリアという強豪ひしめく、いわゆる“死の組”に入ってしまった日本代表だが、見事3連勝を果たし決勝トーナメントに進出。さらにトーナメント一回戦でも、優勝候補のドイツを撃破する。

 メダルのかかるセミファイナルでは、“スペインの超新星”・ミカエル率いる地元スペイン代表と対戦し、ボールの上に乗って進む「セグウェイドリブル」など『キャプ翼』らしい必殺技も炸裂し、大いに盛り上がりを見せた。

 しかし今年4月、原作者である高橋陽一さんが漫画家としての第一線から引退され、本作も未完のまま事実上の連載終了となってしまった。ウェブサイト『キャプテン翼WORLD』にて、ネーム状態の続き『キャプテン翼 ライジングサン FINALS』が公開されたが、スペイン代表との決着までは至っていない。

 日本代表のメダルの行方は気長に待つことにしたい。

■【番外編】そのほか個性豊かなオリンピック漫画たち

 そのほかのオリンピック漫画も紹介しておこう。

 まずは、細野みち子さん、津田幸夫さん共作の水泳漫画『金メダルへのターン』(1969年〜1970年)。1972年のミュンヘンオリンピックを目指したストーリーとなっており、「トビウオターン」をはじめ「渦巻きターン」や「無呼吸泳法」など、数々の漫画らしい技が登場した。

 『嗚呼!!花の応援団』などで知られるどおくまんさんも、『怪人ヒイロ』(1985年〜1988年)という陸上漫画を書いている。ギャグテイストで描かれている本作は、江戸時代から続く忍者の隠れ里で生まれ育った忍者のヒイロが、陸上選手としてソウルオリンピックを目指す物語だった。

 最後は、水島新司さんによる『ドカベン』だ。『ドカベン プロ野球編』(1995年〜2003年)にて、山田をはじめ岩鬼や里中など、いわゆるドカベン世代が2004年アテネオリンピックのアジア予選に出場している描写がある。長期連載の本作において、国際試合の描写は少なく、非常に珍しい展開だったと言えるだろう。

 

 今回はオリンピックを舞台にした漫画作品を紹介してきた。『YAWARA!』は女子柔道のオリンピック種目への採用時期に、『ガンバ!Fly high』は体操の低迷時期にそれぞれ連載され、その競技に対する関心を集めたことは間違いないだろう。

 また、『キャプテン翼』のサッカーへの貢献度は言わずもがなだ。このように漫画の力でスポーツを盛り上げることができるのは、漫画大国である日本ならではの強みかもしれない。

 これからもたくさんの面白いスポーツ漫画・オリンピック漫画が誕生することを期待している。

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