■また一からやり直せばいい「これからの星」
コミックス7巻「これからの星」のエピソードに登場する親子は、ノリツッコミのテンポも良い元気な父親と娘だ。
「これからの星」に到着した鉄郎とメーテル。古い旅館に宿泊した2人は、そこに住む奈美という娘とその父親からもてなしを受ける。奈美は美しい娘だが、猫に向かって「お客さんに迷惑かけるとぶっ殺すよ!!」と言ったり、メーテルの入浴時に“わしが洗ってあげる”と言う父親の頭をぶっ叩いたりと、とにかく豪快だ。
しかし突如、旅館は“突発性台風”という暴風雨に巻き込まれ全壊し、鉄郎たちはパスをはじめ全ての荷物を失ってしまう。
パスを失い、駅前で途方に暮れる鉄郎とメーテル。鉄郎は、パスが台風で飛ばされたのではなく、あの父娘が盗んだのではないかと疑う。しかし後日、父娘は町内総出で鉄郎たちのパスや荷物を探し出したあげく、駅まで届けてくれるのであった。
驚いた鉄郎が「だれも 定期を使って 999に乗ろうと思わなかったのかい?」と尋ねると、父娘は「そんな物ほしくないわ」「わしらはわしらの力でいつかなにもかも手に入れるさ!!」「吹っ飛んだ家くらい 父さんと力をあわせてまた建てなおすわ、平気平気」と言って、立ち去るのであった。
『銀河鉄道999』に登場する親子には物悲しいエピソードも多いが、この親子は別である。一生懸命働き、ハプニングが起きても前向きに生きる姿を見て、鉄郎も「生まれるならこんな星に生まれたかったなあ」と憧れを見せていた。
『銀河鉄道999』には多くの親子が登場し、過酷な環境下で懸命に生き抜こうとする姿が描かれている。今回紹介したエピソードでも、人を騙したり、他人を蹴落とそうとする親子の姿も見られるが、それもまた生き抜くための本能といえるかもしれない。
あらためて本作は、親子の絆や生きる力を描いた見事な作品と言えるだろう。