累計発行部数5億部超えを誇る尾田栄一郎氏のモンスター漫画『ONE PIECE』には、1997年の連載開始以来、1000人を超えるキャラが登場してきた。これだけの人数がいるにも関わらず、尾田氏が描くキャラはみな個性豊かで似通った人物がいないから驚いてしまう。
今回注目していくのは、そんなキャラの中でも強いインパクトを残した美女たちだ。ナミやニコ・ロビンやボア・ハンコックといった王道美人は注目度も人気度も高く、2021年に行われた全世界を対象としたキャラクター人気投票企画「第1回 ONE PIECE キャラクター世界人気投票」ではいずれも上位に名を連ねていた。
過去のエピソードにもヴィオラやミス・バレンタインといったクセのある美女キャラが登場しており、ファンそれぞれに思い入れの深いキャラがいるはず。ここでは、そんな「登場回数は少ないけど印象的だったクセあり美人」をピックアップして振り返ってみたい。
■ウエスト細!新たな人生を歩んだ「ミス・ダブルフィンガー」
まずは、「アラバスタ編」に登場した、色っぽい唇と美しいブルーのソバージュがチャームポイントのザラことミス・ダブルフィンガー。指二本を1月1日(元日)に見立ててミス・ダブルフィンガーという強引なコードネームをつけられている彼女は、「スパイダーズカフェ」の店主・ポーラと、クロコダイル率いるバロックワークス(B・W)のオフィサーエージェントという二つの顔を持つ美女だ。
ミス・ダブルフィンガー時は露出度の高いボンテージを身に纏い、タバコ片手に腰を激しく突き出しながらクネクネと歩き、ポーラ時はソバージュを一つにまとめバンダナ&眼鏡で知的な雰囲気を醸し出す。どちらも違ったセクシーさがあり、このギャップが彼女の魅力を高める要素となっていた。
トゲトゲの実の能力で体を自由自在にトゲトゲにすることができるミス・ダブルフィンガーは、戦闘慣れしていないナミを追い詰め冷酷な強さを見せつける。その一方でクリマ・タクトから飛び出す宴会芸のような技に呆れながらも付き合ってあげる場面もあり、本質的な優しさも垣間見えた。しかし、トルネード=テンポに巻き込まれて惨敗。制圧に来ていた海軍に捕まり投獄されてしまった。
本編ではこれにて退場となるが、扉絵シリーズ「ミスG・Wの作戦名“ミーツバロック”」で、B・W壊滅を知ったミス・ゴールデンウイークらによって留置所から救助されたことが明かされる。G・Wの能力で酒場のポーラになった彼女は、牢獄に残ったクロコダイル、Mr.1、Mr.2、Mr.3以外のメンバーでNEWスパイダーズカフェをオープンするのだった。
メンバーの仲良しぶりにほっこりするこの扉絵シリーズを見て、B・Wが好きになったという読者は筆者だけではないだろう。
■心配になる騙されやすさ…悲しい過去を持つ「ベビー5」
続いては、「パンクハザード編」から「ドレスローザ編」にかけて登場したドンキホーテ海賊団の使用人兼殺し屋ベビー5。ブキブキの実の能力者であり、咥えたばこにミニメイド服、黒髪ロングという魅力的な特徴を持つ美人だ。
ベビー5の生きる軸は、人から必要とされること。自己肯定感の低さや依存心の表れでもあるこの価値観を持つようになったのは、口減らしのために母親から「役に立たないお前は必要のない人間」と捨てられた過去によるもの。それ以来人に尽くし、求められることに幸せを見出す性格になったのである。
しかも度が過ぎていて、人からの頼み事を「必要とされてる」と誤変換してしまうため頼まれれば借金してでもお金を貸し、買ってと言われればなんでも買う。そのせいで借金が9800万ベリー、新聞契約50社というあり得ない状況に陥っている。さらに求婚されればポンポン婚約してしまうため、ボスのドフラミンゴは彼女を守るために求婚した男をこれまでに8人も町ごと消し飛ばしてきた。
そんなベビー5の運命を変えたのが、麦わらの一味と共闘していた八宝水軍の棟梁・サイだった。サイの発する煽り文句を告白と誤変換して惚れてしまった彼女は、彼が冗談で言った「カッカッカ…!! バカげてる!! じゃあ頼もうか! 死んでくれ!!」という無茶ぶりを、笑顔で受け入れこめかみに銃口を当てる。焦ったサイがとめて未遂に終わるが、「それで役に立てるなら」と当たり前のように命を差し出そうとする姿に胸が痛くなってしまう。
ベビー5の暗い過去を見抜いたサイは、援護にきたラオGの「必要とされるだけで命をも捨てる!!! こんな便利な女が他におるか!!?」という言葉に怒り、「勝ったらおれが妻に貰うぞ!!!」と言いながら瞬殺する。情に厚く誠実なサイの漢気が爆発した名シーンだった。その後二人は紆余曲折を経てゴールイン。サイならきっと、ベビー5を末永く幸せにしてくれるだろう。笑顔の二人を本編のどこかでまた見てみたいものだ。