■爆発、破壊、銃撃! 昭和を代表するトンデモ刑事ドラマ『西部警察』

 昭和らしさが満載のアクション作品『西部警察』は、1979年から約5年間、テレビ朝日系列で日曜20時から放送。石原プロにより全3シリーズが制作された、伝説の刑事ドラマだ。 

 渡哲也さん演じる大門圭介(団長)が西部警察捜査課、通称「大門軍団」を率いて凶悪な犯罪者と戦うという物語。捜査課長・木暮謙三警視役の石原裕次郎さんは、同時期に『太陽にほえろ!』にも出演していたため、ファンは週に二度も刑事ドラマで石原さんの演技を楽しめた。

 そんな『西部警察』といえば、街中での派手なカーチェイス、燃えさかる炎と「これでもか!」と言わんばかりの爆破、ヘリコプターからライフル銃での犯人狙撃など、刑事ドラマとは思えないド派手なシーンの宝庫だった。

 そのため、『西部警察』の全236話の撮影では、驚くべき記録的な数字を残している。たとえば、封鎖した道路は4万か所、飛ばしたヘリコプターは600機、壊した車両は約4680台(1話平均20台)。さらに5年間の放送で使用した火薬は4.8トンで、単純計算すると5号玉の打ち上げ花火6万発分にも及ぶ。

■刑事の苦悩を描いた人情と悲哀のヒューマンドラマ『特捜最前線』

 最後に紹介するのは、東映が制作した骨太な刑事ドラマ『特捜最前線』。1977年からテレビ朝日系にて放送され、水曜22時(1985年10月からは木曜21時に移動)という遅めの放送帯ながら、1984年1月18日には最高視聴率27.4%を記録した。

 迷宮入りの事件や再捜査などを専門とする警視庁特命捜査課(通称、特命課)を舞台に、刑事の苦悩を前面に押し出しながら、人間の業の深さや貧困、差別といった社会問題にまで切りこんだ作品である。

 派手な銃撃戦や演出はほとんどなく、救いのない悲惨な結末もたびたびあったため、エンディングで流れるファースト・チリアーノさんの歌『私だけの十字架』がことさら胸に響いた。

 また同番組の刑事役の出演者には共通点があり、それは「特撮経験者」という点だ。たとえば、神代恭介警視正役の二谷英明さんは『マイティジャック 』(1968年)で主人公・当八郎を演じ、桜井哲夫役の藤岡弘さんは、ご存じ『仮面ライダー 』(1971年)1号こと本郷猛役でおなじみ。吉野竜次役の誠直也さんも『秘密戦隊ゴレンジャー 』のアカレンジャー・海城剛役を演じている。

 このように過去に主役級で特撮番組に出演した俳優が多いため、一部ファンの間では番組タイトルをもじって「特撮最前線」とも称された。

 今回取り上げたドラマ以外にも、天地茂さん演じる影ある主人公が子ども心にちょっと怖かった『非情のライセンス』(1973年)、坂上二郎さんが人情味あふれる刑事を演じた『夜明けの刑事』(1974年)など、1970年代は味のある刑事ドラマが多かった。

 そして昭和の刑事ドラマには、主題歌や名物刑事、名ゼリフなど印象深いものが多く、今でも私たちを夢中にさせるほどの力強い魅力を秘めていたのだ。

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