近年、地上波のテレビでは連続ドラマが苦戦するなか、医療ドラマと並んで「刑事ドラマ」が好調だという。思えば、田村正和さんの当たり役『古畑任三郎』(1994年)、沢口靖子さん主演で約25年も続いている『科捜研の女』(1999年)、水谷豊さん演じる杉山右京とのバディもの『相棒』(2000年)など、刑事ドラマには長期続く名作も多い。
そして、それは昭和の時代も同様だ。1970年代、80年代の刑事ドラマはツッコミが追いつかないようなトンデモ展開や衝撃設定のある作品も多かったが、作品の持つパワーと勢い、存在感のあるキャスト陣が視聴者を魅了した。
そこで今回は、昭和の時代にさん然と輝く、インパクトあふれる刑事ドラマの傑作を振り返っていこう。
■スタイリッシュなオープニングと香港カラテにクギヅケ!『Gメン'75』
オープニング で滑走路を横並びに歩き、芥川隆行さんのナレーションがカッコよかった『Gメン'75(以降、Gメン)』は、東映製作のアクション作品だ。1975年よりTBS系列で土曜21時から放映。国際犯罪と戦う「特別潜入捜査班(Gメン)」の活躍が描かれた。
Gメンの中心人物である黒木哲也警視を演じたのは、個性派俳優の丹波哲郎さん。余談ではあるが、同番組の前身となる『キイハンター』(TBS系/1968年)で、丹波さんが演じた役名は“黒木鉄也”だった。『Gメン』の“黒木哲也”と似ているため、筆者のように両番組がゴッチャになった人もいるかもしれない。
また、Gメンの見どころとして、「本格アクション」や、夏木マリさんをはじめ美女ぞろいな「女Gメン」、多国籍な「殺し屋」の存在などがあるが、やはり香港・マカオで海外ロケが行われた「香港カラテ」シリーズは外せない。
実はGメン放映の少し前、ブルース・リー主演のカンフー映画『燃えよドラゴン』(1973年)が世界的に大ヒット。日本でも「香港カラテ映画ブーム」が起きていた。
その下地に加え、まだ海外旅行が高嶺の花だった時代の日本人にとって、異国情緒も楽しめた「香港カラテ」シリーズは、大変魅力的だったのである。
■殉職とニックネームはお約束? 15年も続いた長寿番組『太陽にほえろ!』
刑事ドラマの金字塔と称され、最高視聴率40%以上を誇るのが、東宝・日本テレビ製作による『太陽にほえろ!』だ。1972年から約15年間(全718回)にわたって放送され、金曜20時になれば『太陽にほえろ!』を観るため、日本テレビにチャンネルを合わせる家庭も多かった。
東京・新宿にある七曲署を舞台とした熱い刑事ドラマだが、本作における二大イメージは「ニックネーム」と「殉職」ではないだろうか。
石原裕次郎さん演じる藤堂俊介係長の愛称「ボス」をはじめ、冷静沈着な「山さん(演・露口茂さん)」、人情味あふれる「長さん(演・下川辰平さん)」など、重鎮にもつけられ、若手刑事も気軽にニックネームで呼んでいた。
そして、多くの視聴者をハラハラさせた「殉職」は、最初の殉職者であるマカロニ刑事役の萩原健一さんが、この方法でドラマからの「退場」を提案したのがはじまり。その後、松田優作さん演じるジーパン、ボンやテキサス、ロッキーなど若手刑事が殉職していった。
中盤以降はゴリさんなどのベテラン勢まで殉職し、合計11人の刑事が作中で亡くなっている。放送期間を15年とすると、七曲署ではだいたい1年4ヶ月に一人のペースで殉職したことになり、驚異の死亡率である。