■初見の人をどれくらい意識するのか……それによって浮上する「ある可能性」

 これまで『ドラクエ3』で詳しく描かれなかった部分はいくつもあります。たとえばエリックとオリビアの話や、海賊のアジトに捕まっている男の話などなど。これらはテキストでのみ語られるものであり、少ないセリフから彼らに何があったかを、プレイヤーに想像させるもの。それこそが逆に物語の奥行きを生み出しているのが『ドラクエ』のすごさでもありますが、人によっては少し唐突な印象を受けたり、物足りなく感じたシーンもあるでしょう。

 それらが新要素で掘り下げられるかはさておいて、当時ファミコンの容量の都合上でカットされたであろう、冒険の途中で描かれた“さまざまなシナリオ”が、今回『3』→『1』→『2』の流れになることで、違った見え方になることもあるはずです。

 すごろくでもモンスターメダルでもありません。今回の『ドラクエ3』では、さらなる「ストーリーの充実」が期待されるわけで、このことがめちゃくちゃ楽しみになりました。『3』がというより、今度はラストにプレイすることになる『2』が楽しみになったとも言えますが。

 ただし、この作り方はプレイしている人を前提にするか、初見の人向けに作るかで、伏線の張り方が若干異なるかと思います。

 いまのSNS時代、もし派手な伏線を張ってしまえば、どうしても『2』までの物語を知っている人たちが大きな盛り上がりを見せてしまうでしょう。

 それは初見の人でもきっと目についてしまうはず。詳細は知らなくとも、何かが起きていることは見えてしまいます。

 これをどう迷彩し、目立たせずに「あくまで1つの新要素」くらいの認識にとどめさせるかが重要になるでしょう。さすがに原作『3』に出てこなかったキャラを出すことはしないと思いますが、たとえばオルテガの関係者が増えてきたりするとすぐに大きな話題になってしまうはず。このへんのバランスは本当に大変だと思いますが、さすがに『ドラクエ』を生み出した神様・堀井雄二さんであれば、そんな杞憂を吹き飛ばすような大名作を作り出してくれることでしょう。

 発売は予定通りであれば11月14日。もうまさにすぐ目の前に迫ってきていると言っても過言ではありません。

 長くJRPGの原点として燦然と輝いている不朽の大名作の1ページが書き換えられる、そんな歴史的な瞬間に私たちは立ち会えるかもしれません。

 HD-2Dリメイク版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が、今になってようやくめちゃくちゃ楽しみになってきました。皆さんは『3』から始まるロト3部作にどんな物語を期待しますか?

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