■吉田さんの叫ぶ姿、伊藤さんの無残な最期が話題に…
このように、主要登場人物がどんどん死んでしまう『もう誰も愛さない』。
そんな本ドラマにあって、とくに注目を集めたのが、町田玲子の死に方だ。玲子は金に執着する弁護士で、樫村を脅して金を奪おうとする。しかし最終的に返り討ちにあり、最後はバラバラ死体となってゴミ捨て場に捨てられてしまう。白目を向いた伊藤さんの頭部はあまりにリアルで、その描写を見て当時トラウマになった視聴者もいただろう。
また、本作のオープニングは吉田さんが頭を抱え、ウォーッと叫んでいるシーンから始まる。作中でも吉田さんが雨のなか絶叫したり「小百合!」「美幸!」と叫ぶシーンが続く。
小百合がガンに侵され亡くなるシーンでは、耳元で慟哭する吉田さんの叫び声があまりにも大きかったため、田中さんはリハーサルで耳栓をお願いしたという逸話もある。
ドラマの影響は大きく、当時は吉田さんのモノマネとして、ウォーッと絶叫するパフォーマンスが流行したのもいまや懐かしい。
登場人物のほとんどが死亡するという、衝撃的なストーリーである『もう誰も愛さない』。本作の脚本を担当していた吉本昌弘さんは、当時大流行していた作家、シドニィ・シェルダンが描くような日本版クライムサスペンスを目指していたそうだ。
その甲斐もあってか、まさにドラマ史に残るような怒涛の展開が魅力の『もう誰も愛さない』。劇的なジェットコースタードラマは、令和の今見ても十分に楽しめる作品である。