漫画のキャラクターが涙するシーンは、読んでいるこちらまで心揺さぶられてしまうものだ。『週刊少年ジャンプ』(集英社)でも数多くのキャラが涙を見せており、名シーンがたくさん生まれている。
しかし実は、滅多に涙を見せない主人公も少なくない。今回は、ジャンプ作品の主人公たちが不意に見せた、レアすぎる“涙”の描写について見ていこう。
■仲間との別れを惜しむ感動のワンシーン…『ジョジョの奇妙な冒険』空条承太郎
ジャンプ作品の主人公には、普段からあまり多くを語らない寡黙なキャラクターも数多く登場している。なかでも、クールな立ち振る舞いで多くのファンを魅了しているのが、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』の第3部に登場する17歳の高校生・空条承太郎だろう。
承太郎は日本人離れした大きな体格をしており、寡黙でありながらも強い正義感を秘めた青年だ。窮地に立たされても冷静に状況を分析し、“スタンド”で強敵を撃破していくその姿は実に痛快で、3部はもちろん『ジョジョ』というシリーズを通しての人気キャラクターとなっている。
あまり感情を表に出さない承太郎だが、実は第3部の最終エピソードでほんのわずかに“涙”するシーンが描かれていた。
そのワンシーンとは、すべての戦いを終え、空港で仲間のポルナレフに別れを告げる一幕。ポルナレフに笑顔で別れを告げる承太郎だったが、よく見るとその目元にうっすらと涙が滲んでいる。
幾度となく過酷な戦いを乗り越えてきた承太郎だが、苦楽を共にし、旅をしてきた“友”との別れには、ことさら強く心を動かされてしまったのかもしれない。
■師の死によって弟子はさらなる高みへ…『幽☆遊☆白書』浦飯幽助
ジャンプ作品の主人公は快活な性格をしているキャラも多く、それゆえに不意に彼らが見せる涙には強く心を動かされてしまう。
1990年に連載が開始した冨樫義博氏の『幽☆遊☆白書』の主人公・浦飯幽助も、明るく正義感の強いキャラだ。そんな幽助にも、作中で涙を流すレアシーンが登場する。
“霊界探偵”として、さまざまな強敵との戦いを乗り越えていく幽助。やがては“霊光波動拳”の使い手である幻海の弟子となり、より人間離れした強さを手にしていく。
「暗黒武術会」でも圧倒的な強さで強敵と激闘を繰り広げていくのだが、ここで予想だにしない悲劇が幽助を襲うこととなる。なんと師匠である幻海が決勝戦の相手である戸愚呂弟と決闘し、腹部を貫かれたことで死亡してしまうのだ。
幻海の激しいしごきに悪態をついたり反発することも多かった幽助だが、最期まで自身を導こうとしてくれた師の死を目の前にして茫然とし、激しく深い悲しみを見せる。そしてそのとき、幽助の心をエネルギーとして生きる霊界獣のプーの目には涙が……。本作ならではの印象的な涙のシーンだ。
この出来事は結果的に幽助をさらに奮い立たせ、決勝戦の相手である戸愚呂弟への闘志をより強固なものへと成長させることとなるのだった。