「少年を演じられる声優になりたい」クレヨンしんちゃん声優・小林由美子の原点となった「野沢雅子」と「矢島晶子」の画像
アニメ『クレヨンしんちゃん』野原しんのすけ役・小林由美子さん  撮影/有坂政晴

 国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』で主人公・野原しんのすけ役を務める小林由美子さんは、声優として活動を始めて26年のベテラン声優。『クレヨンしんちゃん』をはじめ、『デュエル・マスターズ』(主人公・切札勝舞役ほか)、『焼きたて!!ジャぱん』(主人公・東和馬役)などで、多くのアニメファンを魅了してきた。8月9日からは、最新作である『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』も公開される。

 そんな小林さんが「声優」を目指したきっかけとは何だったのだろうか。そして、声優として転機を迎えた瞬間は? 声優としてのルーツとターニングポイントを聞いた。

――現在は、野原しんのすけ役として活躍されている小林さんですが、声優を目指したきっかけは何だったのでしょうか。

小林 私は小学4年生のときに声優になりたいって思ったんです。そのきっかけはアニメ『ドラゴンボールZ』を見たことでした。実はそれまでは声優さんの存在を知らなくて、孫悟空(『ドラゴンボール』シリーズの主人公)も、“悟空自身”が声を出していると思っていました(笑)。

 そうしたら、ある日、クラスの友だちがアニメ雑誌を見せてくれたんですね。その雑誌の中に野沢雅子さんの記事があって。この人が『ドラゴンボールZ』の孫悟空の声をやっているんだよと教えてくれたんです。私はそのとき「悟空さんの声って悟空さんが出してるんじゃないの!? しかも女の人が!? あの声を女の人が!?」とめちゃくちゃ衝撃で。でもそこから「声優ってすごい!」「私も声優になりたい!!」と、どんどんと興味を募らせていくきっかけになりましたね。

――声優は女性であっても男の子の役、女の子の役、どちらも演じることがある。その演技の幅にひかれていったんですね。

小林 最初は、男の子の声を女性が出せるなんて信じられないと思っていました。でも、それができる声優って、本当にすごい仕事だなと思い始めて……。そこからは声優になるためにはどうしたらいいのかを考えるようになったんです。

 まずは図書館に行って「声優になるためには」みたいな本を借りまくって、アニメ雑誌も読みまくって、どんどん声優の知識を学んでいきました。いつしか、「私も絶対に少年の声を演じる声優さんになるんだ」と考え始めて。そこからは良くも悪くも、その目標にわき目もふらず突き進んでいったと思います。ずっと野沢雅子さんに憧れて、ずっと「少年の声を演じられる声優さんになる」ということだけを考えて、声優になることができました。

――野沢雅子さんが、小林さんの最初の目標だったんですね。

小林 実はそこからもうひとつの転機がありまして。声優になってから「この世界で生き残っていくためには今のままじゃ通用しない」という壁にぶつかってしまったんです。声優として、私だけの何か強みになるものを見つけないといけない。その時にアニメだけじゃなく、洋画の吹き替えでも通用する自然な少年の演技ができたらと考えるようになりました。それから子役が吹き替えている洋画作品を見まくって、その声を録音してマネるなど、ナチュラルな子どもの演技を学んでいきました。

 その中で、『ホーム・アローン』という映画を見たんですね。そのときに主人公のケビンの吹き替えを聞いて「なんて上手な子役さんなんだ!」と感動して、キャストを調べたら、矢島晶子(現・うえち あき)さんだったんです。「え、女の方なの!? 大人なの!?」と、とても驚きました。

「大人の女性でもこれだけナチュラルな男の子の演技ができるんだ……!」「私もより自然な少年の演技ができるようになりたい……!!」と、そこから矢島さんの声を聴きまくったり、『ホーム・アローン』を録音して文字起こしして、自分でも言ってみて。ひたすらずっとマネる練習をしました。

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