■恐怖の新幹線アタック競技
第21回大会の第三次予選の種目「恐怖の新幹線アタック競技」も強烈なインパクトを残した競技だ。
これは東京駅のホームから新幹線の先頭車両をフルパワーで押し、どこまで新幹線を滑走させられるかを争う競技。初っ端に登場したタイルマンが、いきなり終点の博多駅まで新幹線を走らせ、超人のパワーのすごさを、まざまざと見せつけたのが印象的だった。
キン肉マンは緊張のあまり新横浜までしか到達させられず、その後登場したウルフマンはキン肉マンの落としたバナナの皮に滑って、「有楽町」という悲しい記録に終わった。
そしてこの競技の最大の見せ場は、優勝候補のテリーマンの挑戦のときに訪れる。豪快に新幹線を押し出したテリーマンは、はるか彼方を見ながら「いかん……!!」とつぶやいて、線路上を駆け出す。
すぐさま新幹線に追いついたテリーマンは、自らの体で新幹線を停止させ、競技失格となった。そのレール上には子犬が寝そべっており、テリーマンは予選落ち覚悟で小さな命を救ったのである。
なぜ新幹線の高架に子犬が……という疑問はさておき、この新幹線アタック競技は、超人のパワフルさを表現する意味でもすごく秀逸なアイデアだった。
キン肉マンには「超人強度(パワー)」という強さを数値化する要素があるが、その数値よりも、己のパワーで「新幹線を東京から岡山まで走らせた」というほうが、読者目線でより具体的に強さを実感できたのである。
あらためて『キン肉マン』を読み返してみると、ギャグ的なおもしろさと、バトル面のシリアスさが、バランスよく楽しめたのが「超人オリンピック」のあたりだったかもしれない。
一見ハチャメチャな競技ばかりに見えて、きっちり笑いどころと感動的なドラマ、そしてハラハラさせる展開があった。その競技を考えついた、ゆでたまご先生の天才的な発想には驚かされる。
そして今、現実世界では「パリ五輪」と、始まったばかりの新アニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』が盛り上がっている。もし新アニメを観て『キン肉マン』を気に入った人がいたら、ぜひコミックスで「超人オリンピック」を読んでみて欲しい。