■ゴールへの強い意志、流川の「ダブルクラッチ」
最後に、湘北・流川楓の「ダブルクラッチ」を紹介したい。
翔陽戦では高野193cm、永野191cm、豊玉戦では板倉183cm、岩田190cmと、高身長のプレーヤーをそれぞれかいくぐってシュートしてみせた。(豊玉戦は片目を負傷していたこともあり決まらなかったが……)
これは空中で相手をかわしてシュートを決める高等技術で、シュートテクニックはもちろん、長い滞空時間とその間姿勢を保てるボディバランス、さらにはゴールまでの道筋を一瞬で決める想像力など、そのすべてにおいて高いレベルが必要とされるプレーだ。
NBAでも決まれば大盛り上がり必至の「ダブルクラッチ」。筆者としては、どうしても“バスケの神様”と称されるマイケル・ジョーダン選手や、亡きコービー・ブライアント選手の姿が思い出される。
彼らもダブルクラッチを用いて相手を翻弄し得点を量産していた。現役では、NBA歴代最高選手と呼ばれるレブロン・ジェームス選手や、八村塁選手も得意としており、両者が出場するパリ五輪でも豪快なダブルクラッチが見られることだろう。
このようにNBAなどトップ選手の間では比較的多く見ることができるダブルクラッチだが、『SLAM DUNK』作中において、インターハイ神奈川県予選の海南戦で牧に見せた流川のダブルクラッチダンクは別格だった。
コミックス13巻、ダンクしようと飛んだ流川。それに反応した牧がブロックに入るが、流川はそれを空中で一端かわし再度ダンクをぶち込んでいる。会場がどよめいていたプレーだが、これは間違いなく今のNBA基準で見ても、世界トップレベルのスーパープレーだろう。
今回は、今のバスケ基準で見返しても凄すぎる『SLAM DUNK』の名プレーを紹介してきた。90年代の作品でありながら、現代バスケ最高の舞台NBAに当てはめても見劣りしないスーパープレーばかりだ。
さらにこれら作中で描かれたプレーの数々は、ただ単に技術の高さを示すだけでなく、プレーヤーたちキャラの意志や熱意そのものであり『SLAM DUNK』という作品の魅力を再認識できるものでもあった。
今回のパリ五輪ではどんなスーパープレーが見られるのだろうか。バスケ日本代表「AKATSUKI JAPAN」の活躍はもちろん、世界の名プレーヤーが一堂に会するこの祭典を楽しみたい。