■繭に包まれた999が幼虫のエサ? 『終わりなき夏の物語』

 続いての虫にまつわるエピソードがあった星は、セミの声が鳴り止まない「終わりなき夏の惑星(エンドレス サマープラネット)」だ。

 この星を支配する昆虫人間、インセクターに捕らえられた鉄郎は熱湯でゆでられ、体から(動物)油を採取されかける。

 そのとき鉄郎はインセクターに「機械人間か?」と問いかけると、逆に「そんな物なにさ」「人間が造った機械が私たち(昆虫)の体のマネなのさ」と言い返された。

 今でこそ、昆虫の複眼などを転用したレンズなど、「生物模倣(バイオミメティクス)」という技術が知られているが、40年以上も前の作品に、その考えを反映させていたことに驚かされる。

 その後、なんとか危機を脱した鉄郎とメーテルだが、今度は999号が大きな繭に囚われてしまう。繭の中にはインセクターの卵がぎっしり詰まっており、彼らは生物に卵を産みつけ、エサとして食べさせる「ヤドリバチ」に似た習性があることが判明した。

 そして999号の車内に、孵化したばかりの大量のインセクターの赤ん坊が侵入してきたときの描写には、思わず「ゾッ」とさせられた。

 ちなみに心優しい鉄郎は、彼らを殺すことに抵抗を示し、結局999号は大量の赤ん坊を乗せたまま出発。しかし、インセクターの子どもたちは環境の変化に耐えられず、死に絶えてしまうという切ない結末だった。

■現代人にも警鐘を鳴らす昆虫人間と機械人間の対立『かげろう気流』

 次は、私たちの生き方に一石を投じる、惑星「かげろうの湖」でのエピソードを紹介する。

 この星で昆虫人間カゲラリア族にさらわれたメーテルは、彼らの敵である機械人間と戦うための指導者にされてしまう。一方、鉄郎のほうもUFOにさらわれ、クレーターに捨てられたところを機械人間に捕まってしまい、彼も機械人間の指導者に担ぎ上げられた。

 昆虫人間と機械人間は対立していたが、どちらも“指導者”を待つばかりで自分たちは何もせず、他力本願で不平不満を述べるばかり。そんな連中を早々に見捨て、鉄郎たちは999号へと戻っていくが、メーテルは「何も努力せずに人を働かせるのを当然の権利だと思っている種族に未来はないわ」と、彼らに辛らつな言葉を投げかけた。

 ちなみに、鉄郎をさらったUFOに乗っていたのは、アリに似た昆虫型生物で、こちらは「働くことだけに生きがいを持ち、他のことには鈍感な生物」とメーテルが説明。そのアリのような昆虫生物の無機質な生き様は、まるで日本人を暗喩しているようで、得も言われぬ恐ろしさを感じたエピソードだ。

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