『ウルトラマン』シリーズといえば、人々の脅威となり大暴れする怪獣をいかにして倒すか……という点が物語の一番の見どころだ。しかしなかにはコミカルな怪獣が登場するエピソードもあり、視聴者たちをあぜんとさせたことも。そこで子ども心に衝撃を与えた、昭和ウルトラマンの“ギャグ回”について見ていこう。
■重すぎる巨体に科特隊もたじたじ…スカイドン
“怪獣”といえば、地球上の生物を圧倒するような凄まじい体躯を持つものばかりだが、なかでもその圧倒的な“重さ”で騒動を巻き起こしたのが、1967年に放送された第34話「空の贈り物」に登場した怪獣・スカイドンだろう。
突如、火の玉となって空から飛来し、東京の晴海の埋め立て地へと出現したスカイドンは、太く大きな肉体を持つ四足歩行の怪獣で、その見た目は爬虫類に近い。
口から放出する炎や鋭いヒレ、頑丈な肉体などさまざまな特徴を持つ怪獣だが、特筆すべきはその“重さ”。なんと体重は20万トンというとんでもない数値で、これはウルトラマンの約6倍に相当するのだから驚いてしまう。
凶悪な怪獣ではないが、その重さゆえに歩き回るだけでも甚大な被害が出ると判断した科学特捜隊は、あの手この手でこの怪獣を宇宙へと送り返そうとする。その奮闘ぶりがコミカルに描かれるのだ。
まず、ジェットビートル3機を使ってワイヤーで持ち上げようとするも、重さから機体が墜落。すると、そこにウルトラマンが駆けつけ応戦するが、重すぎて動かすことすらできずじまい。背負い投げしとうとしても、押しつぶされて返り討ちにあってしまう。
そこで巨大なオートジャイロ(プロペラ)を取り付けて宇宙に運ぼうとすると、これが成功。見事に空へと運ばれていく。作戦成功でパーティを始める科学特捜隊のメンバーだったが、宇宙に上がる前にプロペラの推進力が弱まり、スカイドンは落下。結局、振り出しに戻ってしまう。
つぎはロケット弾を体に撃ち込んで宇宙に飛ばそうとするが、重すぎて効果なし。それどころか、ロケット弾の推進力からか、科学特捜隊のメンバーを追いかけ回す結果に……。
最終的にはなんとスカイドンに大量の“水素”を注入し、風船のように空に浮かせるとんでもない作戦を決行。ようやく超重量を持つスカイドンが空へと浮かび上がり、科学特捜隊は大喜び。だが、事情を知らなかった航空自衛隊の戦闘機が、風船となったスカイドンを発見。攻撃して落下させてしまう……。
最後は、再び登場したウルトラマンの体当たりによって爆発。スカイドンは空に散ってしまったが、まるでコントのような作戦の数々が印象的なエピソードだった。
ちなみにこのエピソード、ウルトラマンへ変身する際、ハヤタ隊員が“ベーターカプセル”と間違えて、直前まで食べていたカレーの“スプーン”を掲げる間の抜けたシーンが描かれたことも有名で、なにかとファンの間では語り草になるギャグ回となっている。
■コミカルな見た目から今もなお人気高し…ギャンゴ
シリーズを通して好戦的な“怪獣”が多いなかで、第11話「宇宙から来た暴れん坊」に登場した怪獣・ギャンゴは、その独特の立ち振る舞いで多くのファンを沸かせた。
物語冒頭、宇宙から“黒い隕石”が飛来するのだが、これは周囲にいる持ち主の脳波を読み取り、思った通りの姿に変形する特殊な物質だった。さまざまな物に変化していく隕石だが、悪人である鬼田の手に渡ってしまったことが騒動のきっかけとなってしまう。
鬼田は隕石を“怪獣”に変化させた挙句、「もっと大きくなれ」と巨大化させてしまったのだ。
カラフルな体色とクレーンキャッチャーのような腕を持つギャンゴだが、腕を振り回すだけで周囲のものを破壊してしまうことから、その暴走を止めるべく駆け付けたウルトラマンと戦うこととなる。
激しいバトルが繰り広げられる……と思いきや、ギャンゴはどこかその挙動に幼い部分も多く、駄々っ子のように手足をばたつかせる。腕を振り回した“ぐるぐるパンチ”で応戦。ときには死んだふりでウルトラマンの意表を突くなど、なぜか人間臭い戦法が数多く飛び出し、終始、ウルトラマンとコミカルな攻防を繰り広げた。
ギャンゴの戦い方に引っ張られたせいか、ウルトラマンもいつとは毛色の違う戦闘方法を披露しており、相手をくすぐることで組付きから脱出、馬跳びをしたり水中に突き落としたりと、まるで子ども同士の喧嘩のような微笑ましい姿が描かれていた。
被害こそ出したものの、どこか憎めない姿で視聴者を楽しませた人気怪獣である。