■「ジェガンvsギラ・ドーガ」直接対決は?
では両軍の一般兵同士の戦いはどうだったのだろうか。映像に描かれたシーンはそれほど多くなかったが、名もなきジェガンのパイロットが、ギラ・ドーガの放った初弾を華麗な動きで回避したのち、シールドからミサイル・ランチャーを発射。この一撃で、鮮やかにギラ・ドーガを仕留めるシーンは確認できた。
また、放置されていたジェガンを無断拝借した「ハサウェイ・ノア」が、偶然遭遇したギラ・ドーガ1機をバルカンで撃墜するシーンもあった。ほぼパイロット未経験のハサウェイにすら扱えてしまう、ジェガンの操縦性の良さがうかがえる場面である。
このように映画を振り返ってみると、名のあるパイロットの強力な機体や艦砲射撃にやられるシーンを除けば、ジェガンがギラ・ドーガより明確に劣っていると感じるような描写は見当たらなかった。
逆にギュネイのヤクト・ドーガのビーム・ライフルをシールドで弾きながら肉薄した、勇敢なジェガンの健闘シーンが目についたほどだ。
やはり名のあるエースやニュータイプが無双する場面の相手役がジェガンだったことで、「やられ役」の印象が残ってしまったのかもしれない。
もうひとつ可能性として考えられるのは、『逆襲のシャア』以外の作品でのジェガンのイメージが影響したケースだ。『逆襲のシャア』が公開されてから3年後に、映画『機動戦士ガンダム F91』が公開されている。
『逆襲のシャア』と『F91』の公開間隔はわずか3年だが、実は作中では30年もの月日が経過していた。そして、この『F91』の時代にもジェガンが登場するのだ。
改修や改良を重ね、30年も残り続けた名機ジェガン。だが、残念なことに『F91』の時代になると、最新鋭の小型MSに蹂躙される役回りを担うことになった。
クロスボーン・バンガードのMS「デナン・ゲー」にあっさりと倒され、蹴り飛ばされたジェガンの頭部が宙を舞うシーンを覚えている人も多いだろう。このときの無惨な負け姿を見て、「ジェガンは弱い」と認識されたのだとしたら、とても悲しい話である。
しかし、その後に製作されたOVA『機動戦士ガンダムUC』では、ジェガンの多彩なバリエーション機体や、上位機種にあたるジェスタが登場。その第1話では、ニュータイプ専用機「クシャトリヤ」と、特務仕様のジェガンD型やスターク・ジェガンが激闘を繰り広げている。敗れはしたものの、胸のすくようなスタークジェガンの活躍が描かれ、世のジェガン好きは歓喜したはずだ。
さらに2021年に公開された映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』にも、ジェガンのバリエーション機の姿が。それに加え、ジェガンの設計思想を継承するグスタフ・カールなども登場しており、比較的新しめの宇宙世紀作品にジェガンは欠かせない存在となっている。
量産機は、時代が移り変わるとともに劇中で担う役割も変化していく。その儚さから、ジェガンのような量産機に魅せられるファンは少なくない。今後映像化される宇宙世紀の作品にどれだけジェガンが登場し、どのような扱われ方をするのか分からないが、それでもほんのわずかな登場シーンに一喜一憂することになるのだろう。