1988年に公開された映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で初登場した地球連邦軍の量産機「ジェガン」。作中では、その後30年以上にもわたって長期運用された名機として知られている。
拡張性の高さや、機体の信頼度などが多くのバリエーション機を生んだ主な理由だったが、アニメ『逆襲のシャア』という作品だけを考えた場合、ジェガンの性能面に対する評価は必ずしも高くない様子。
映画を観て「ジム以上のやられ役だった」という残念な印象を抱いた人もいるようだ。しかし、その評価は本当に正しいのだろうか。
『逆襲のシャア』で初登場したジェガンは、ジムやネモなどを発展させた最新の量産機で、ロンド・ベルに優先的に配備されていた。物語終盤には、連邦艦隊が擁するほかの量産機も登場したが、そちらはジェガンより旧式のジムIIIが多かったのが印象的だ。
ロンド・ベル側の主力機がジェガンなら、新生ネオ・ジオン側の主力機はギラ・ドーガである。そちらとの比較から始めてみよう。スペック上では、ジェネレーター出力は「ジェガン:1870kW」「ギラ・ドーガ:2160kW」、総推力は「ジェガン:61400kg」「ギラ・ドーガ:54000kg」と甲乙つけがたい。
本体重量は「ジェガン:21.3t」「ギラ・ドーガ:23.0t」と多少差があり、推力の高いジェガンのほうが軽量なので、機動力の面ではジェガンが優れてそうだ。そのかわり、装甲面などに不安があったのかもしれない。
だが、ちょっと待ってほしい。ジェガンは最新型なのに対し、ギラ・ドーガは第一次ネオ・ジオン抗争(ZZガンダムの時代)時の機体をベースに設計されたもの。やや古めの設計にもかかわらず、新型のジェガンとスペック面で遜色ないとすると、むしろギラ・ドーガが優秀すぎたという見方もできそうだ。
実際のところ、『ガンダム』作品のモビルスーツの強さは、スペックの数値だけで測れないのがお約束。だが、ジェガンの数値に最新型というほどの優位性を感じられなかった点は否めない。
■『逆襲のシャア』劇中でジェガンはどう戦ったのか?
それでは実際に劇中でのジェガンの登場シーンを振り返ってみよう。映画『逆襲のシャア』において「やられ役」の印象が強いのなら、どういう相手に倒されたのかがポイントになりそうだ。
まず、序盤からジェガンを撃破するシーンが目立ったのは、新生ネオ・ジオンの「レズン・シュナイダー」だ。レズンは、モビルスーツ隊の隊長を任されたエースパイロットであり、青いカスタムカラーのギラ・ドーガを駆ってジェガンをなぎ倒していた。
そのほか、ヤクト・ドーガに乗っていた「ギュネイ・ガス」、大型モビルアーマーのα・アジールに乗っていた「クェス・パラヤ」、サザビーに乗っていた「シャア・アズナブル」なども、ジェガンを撃破するシーンが目立った。
彼らが搭乗していたのは、いずれもニュータイプや強化人間の専用機であり、ファンネルや高火力の武装によってジェガンはなすすべもなく撃破されている。
一方、ジェガンに乗っていたのはロンド・ベルの一般兵が大半だ。名のあるエースパイロットや彼らの専用機に蹂躙されるのは、物語の都合上、仕方がないともいえる。