漫画やアニメには、メインキャラのほかに数多くのモブキャラが登場する。彼らのほとんどが名もなき群集のひとりで、これといった活躍を見せるわけではない。特にバトル漫画の場合、あっさりと殺されるパターンも少なくないだろう……。
しかしそんなモブキャラの中にもかなり印象に残るキャラがいる。爪痕を残すかのように衝撃的な展開を見せ、メインキャラ顔負けの存在感を放つ者たちだ。彼らは名前がない場合、その状況をあらわすための変なあだ名を付けられてしまうこともある。
今回は、一瞬だけの登場だったのに読者に強烈な印象を残したモブキャラを紹介していきたい。
■恐るべき危機管理能力!『呪術廻戦』ばっくれバイトくん(愛称)
まずは芥見下々氏による『呪術廻戦』(集英社)のモブキャラから紹介していこう。『呪術廻戦』は群集での戦闘シーンもしばしば登場し、無関係の人間も次々と巻き込まれる展開になっている。
そのためモブキャラの数もかなり多いが、そんな中で強烈な存在感を放っているのがファミレス店員の男性キャラだ。見た目は冴えない老け顔の男性で、特に変わった特徴はない。
しかし彼はある日のバイト中、来店してきた夏油傑(偽夏油)が座っている5番テーブルに違和感を抱く……。周辺から放たれる異様な雰囲気を感じ取ったのだ。それもそのはず、一般人には見えないがそのテーブルには、漏瑚や花御といった特級呪霊もいた。そもそもこの面子がファミレスにいること自体が異常である。
この男性キャラはすぐさま「ここにいたら危険」と細胞レベルで察し、店長に「すみません店長 俺 辞めます」と伝えると、そのままピューンと店を飛び出してしまう。
その後の展開を見ると、このキャラの選択は正解だったのが分かる。漏瑚が店内にいた全員を焼き尽くしてしまったのだ。もし、あのまま店内に残っていたら間違いなく助かっていなかった……。
彼はその異様な危機管理能力の高さと初登場時の「俺は今からバイトをばっくれる」というモノローグから、一部のファンの間ではばっくれバイト君、生存本能の王といったあだ名でネタにされている。しかし、呪術師でもないモブキャラが、あそこまで見事に危機を回避できたのは称賛に値するだろう。
■不憫すぎて印象に残った…『ジョジョの奇妙な冒険』ウィルソン・フィリップス上院議員
続いては、荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』から。本作でも、名も無い一般人が巻き込まれて惨殺されるシーンはかなりある。
そんなモブキャラの中で特に強い印象を残したのが、ウィルソン・フィリップス上院議員だろう。名前がある時点で他のモブキャラとは別格であることが分かる。
ウィルソンが登場したのは、第3部でのDIOと承太郎たちの決戦の場だ。DIOは日没とともに逃げるジョセフたちを追いかけるため、停まっていた自動車を利用しようとする。乗車していたウィルソンは、DIOに対して上から目線でたしなめるというとんでもない行為に出てしまったのだが、あっさり歯をへし折られて圧倒的な力の差を見せつけられた。
それでも自身の輝かしい経歴を「わしは… ウィルソン・フィリップス上院議員だぞーーーーッ」で締めるモノローグを披露した後、DIOに逆らおうとするウィルソン。しかし今度は鼻をへし折られ、逃げ出そうとするも「ザ・ワールド」を二度も食らって精神崩壊する羽目に……。
そこからはウィルソンは大暴走し、DIOに言われるがまま歩道を運転して一般人を次々轢き殺していく。しかもその後、「この上院議員のわたしの命だけは助けてくれますよねェェェェ~~~~~~ッ」と命乞いをするも、「だめだ」とバッサリと切り捨てられてしまった。そして最終的にはジョセフたちの乗った車に投げつけられて死亡するのだった。
DIOに言われるがままに従ったのに、結局は殺される……。あまりにも不憫だが、そのおかげでかなり印象に残った。大抵のモブキャラは何もできずにDIOに一瞬で殺されるので、ここまで会話のやり取りがあったキャラも珍しいといえる。