人気のバトル少年漫画には、主人公を苦しめる強い敵キャラが多く登場する。とくに最大の敵といえるキャラクターの多くは恐ろしい見た目をしており、その外見同様、残忍な攻撃で主人公たちを苦しめてくるのだ。
しかしそんな敵キャラのなかには、見た目がかなり可愛らしい者もいる。一見すると主人公の仲間にもなれそうな雰囲気の彼らだが、そうした見た目のキャラのほうが実は攻撃がエグイことも多い。今回は人気少年漫画に登場した、可愛い見た目とは違う恐ろしい敵キャラを紹介したい。
■美少年に秘められた残酷な過去『るろうに剣心』瀬田宗次郎
1994年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載を開始した、和月伸宏さんの『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』には、主人公の緋村剣心を狙う数々の強敵が登場する。その多くが見た目も屈強な恐ろしいキャラだが、十本刀の一人である瀬田宗次郎は違った。
宗次郎は小柄の剣士で、常にニコニコと笑みを浮かべている。優しそうな印象の美少年で、とても残虐非道な行動をするようには見えない。
しかし宗次郎は登場シーンでいきなり明治政府内務卿の大久保利通を暗殺。平然と「この国の行く末なんて 今から死ぬ人には無用な心配ですよ」というセリフを吐き、笑いながら大久保卿の命を奪っているから恐ろしい。
宗次郎のこの笑顔の裏には凄惨な生い立ちがあり、普段は「喜怒哀楽」の「楽」以外を封印していた。そんな彼が信頼を寄せる志々雄真実は、宗次郎のことを“最強の修羅”と評しており、実際に繰り出す“縮地”や“瞬天殺”の技は、目にも止まらぬ速さで剣心を苦しめた。
ちなみに宗次郎は実写映画2作目と3作目『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』でも登場している。演じたのは、神木隆之介さんだ。神木さんは凄技のアクションはもちろん、宗次郎の笑顔の裏の複雑な心情までも表現しており、観る者に衝撃的なインパクトを与え話題となっていた。
■可愛い子どもじゃないの?『鋼の錬金術師』セリム・ブラッドレイ
荒川弘さんの『鋼の錬金術師』(『月刊少年ガンガン』スクウェア・エニックス)にも、見た目とは裏腹に恐ろしい攻撃をする敵が登場する。それが、“セリム・ブラッドレイ”だ。
セリムは主人公・エドワード・エルリックたちの敵である大総統、キング・ブラッドレイの養子だ。見た目は可愛らしい少年で、普段の言動も父を尊敬する礼儀正しい男の子という印象だった。
しかもエドワードとの対面シーンでは“憧れている”といった言動も見せていたため、読者のなかにはセリムが何らかの解決の糸口になってくれるのでは?と思った人もいるかもしれない。
しかし本物のセリムの正体は敵であるホムンクルス・プライドであった。攻撃も恐ろしく、狙った人物の背後に巨大な影となって現れ、瞬く間に体を細切れにしてしまう。巨大な黒い体に無数の目や口が備わったビジュアルは、本作に登場する敵キャラのなかでもとくに恐ろしく不気味な存在だ。
ちなみに2022年に公開された実写映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』でセリム・ブラッドレイを演じたのは子役として人気を博していた寺田心さんだ。寺田さんはセリムのときは甲高い可愛らしいセリフを意識し、プライドのときは傲慢を意識するなど、声の高低差を変えていたそうだ。
漫画、アニメ、実写映画それぞれで、セリムとプライドのギャップを比べてみるのも面白いだろう。