■作中屈指の人格者『機動戦士ガンダム00』セルゲイ・スミルノフ

 1期2007年、2期2008年に放送された『機動戦士ガンダム00』、そこに登場したセルゲイ・スミルノフもいぶし銀の漢だ。

 セルゲイ・スミルノフは、左眼から頬にかけて大きな傷跡が特徴的な人類革新連盟軍の軍人。“ロシアの荒熊”の異名を持つ無骨な軍人である彼は、特務部隊・“頂武”の隊長として、幾度となくガンダムと交戦し彼らを窮地に追い込んだ。

 またセルゲイは作中屈指の人格者でもある。“超人機関”により生み出された超兵1号ソーマ・ピーリスが部下として配属された際は、若者が戦闘に参加することや、超人機関の非人道的な研究について否定的な立場を取るなどしていた。

 そんなセルゲイだったが、正しい軍人であろうとするあまり、戦友であり妻であったホリー・スミルノフを見殺しにした過去がある。そのことが原因で、息子のアンドレイとは深い確執を抱えていた。

 その贖罪もあったのかもしれない。部下のピーリスと親子に近い関係を築いており、ピーリスが行方不明になった際には部下の制止を振り切って、自らジンクスに乗り捜索をおこなっている。

 そして、発見したピーリスは以前までの彼女ではなく本来の“マリー・パーファシー”という優しい人格に戻っていることを知ると、拳銃を空に撃ち、「たった今 ソーマ・ピーリス中尉は名誉の戦死を遂げた」と言い、敵であろうアレルヤ・ハプティズムに潔く託す。ピーリスとの別れは本当の父娘のようだった。

 そして第17話「散りゆく光の中で」。セルゲイはアンドレイにクーデターに関与していたと誤解されてしまう。母の敵とばかりに、ジンクスIIIで父に襲いかかるアンドレイ……そしてセルゲイは無抵抗のまま息子のGNビームサーベルを受け、最期は自機の爆発に巻き込まれないよう息子から離れ、爆死した。

 セルゲイは本作において数少ない人格者である一方、大事に思っていたであろう息子に恨まれ続けた挙句、勘違いの末に討たれてしまう。父としては最期まで報われない、不器用な漢だった。

 

 今回は歴代『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する“いぶし銀の漢たち”を紹介してきた。いずれもエース級の腕を持つベテランキャラで、作中ではそれぞれがおおいに活躍を見せていた。

 筆者が視聴していた当時、もちろんカッコいいとは思っていたが、本当の意味でその良さは分かっていなかったかもしれない。大人になった今、あらためて見てみると、彼らの立場や行動への動機などが細かく分かり、より魅力的なキャラに感じた次第だ。

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