■ドラマの演出に感動…『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』

 最後にご紹介するのは、沖田×華さん原作の『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』。本作は、沖田さん自身が看護師の見習いとして、実際に勤めていた産婦人科での経験をもとに作られている。

 本作が2018年に実写ドラマ化された際、主人公の青田アオイを演じたのは清原果耶さんだ。ドラマでは原作同様、未受診や持病を抱えているなど、さまざまな事情を抱えた妊婦のエピソードが描かれている。

 第5話「14歳の妊娠」は、タイトル通り、未成年の妊娠をテーマにしたエピソードだ。
中学生の北野真理は大好きな恋人との間に子どもを授かる。年上の恋人は、自分を大学教授だと真理に説明していたが、誰がどう見ても彼女は騙されていた。それでも彼を信じている真理は「産む」といって、聞く耳をもたない。

 両親も子どもをあきらめるように諭すが、真理の決意が揺らぐことはなかった。そんな娘を見て、母親の​​弘子は彼女の意思を尊重する決断をする。

 まだ14歳の娘の出産を応援するなんて、並大抵の決意では難しいだろう。間違いなく弘子は、自分が守り育てていくという強い気持ちで真理の背中を押したのだと思う。

 しかし彼らに待ち受ける運命はとても残酷だった。真理は決断自体が間違いだったのかもしれないと自身を責めるようになっていく……。

 原作でも涙なしでは見ることができないエピソードだが、ドラマではオリジナルの脚本が加えられ、鳥肌ものの仕掛けが施されている。点と点が繋がったとき、優しい気持ちに包まれること間違いなしだ。ぜひ、本作を見て確かめてみてほしい。

 

 中学生や高校生の妊娠と聞くと、どこか別の世界で起きていることのような気持ちになる人も少なくないだろう。しかし、「未成年の妊娠」は決してファンタジーではない。もしかしたら今このときも、自分の隣で同じ悩みを抱え、大きな決断をくだそうとしている人がいるかもしれない。

 これらのエピソードに触れ、生まれてくる命は皆、あたたかい幸福に包まれていてほしいと願わずにはいられない筆者だった。

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