『クロサギ』や『マイホームヒーロー』、『大奥』でも魅せた! 「俳優・津田健次郎」が演じた漫画実写化作品の「ヒール役」の画像
津田健次郎 (C)ふたまん+

「俳優・津田健次郎」の勢いが止まらない。津田さんといえば、アウトローな役をこなす実力派声優として、昔からアニメファンの間で愛されてきた。しかし実はそのルーツは俳優で、近年では声優だけでなく俳優としての活躍を目にする機会が増えている。

 2023年放送『ラストマンー全盲の捜査官ー』(TBS系)では、愛情深い父親で物語のキーマンでもある鎌田國士役を20代から70代まで演じ切るなど、幅広い役どころに挑戦している津田さん。

 それでもファンが思わずニヤリとしてしまうのは、やはりクセの強いヒール役ではないだろうか。そこで今回は津田さんが演じた役のなかから、とくに漫画実写化作品に絞って3つのヒール役を紹介したい。

■絵に描いたような悪徳理事長『クロサギ』宇佐美孝也

 まずは、2022年放送のドラマ『クロサギ』(TBS系)。作者:黒丸さん、原案:夏原武さんによる漫画が原作でで、詐欺師をターゲットにする詐欺師「黒鷺(クロサギ)」の青年・黒崎高志郎の姿を描いている。

 津田さんが登場したのは第8話、病院理事長の宇佐美孝也役だ。経営改革という名目で好き放題している宇佐美は、違法行為にも手を染めて裏金作りに励んでいる。その手口は、生活困窮者に生活保護を受給させたうえで病気をでっちあげて入院させ、保険点数を水増しして医療費をだましとるという悪質なものだった。

 この宇佐美、登場後の第一声は、元ホステスの若妻との電話で「だーからー、今日は遅くなるっつってんだろ!」と約束を破るシーンなのだが、この時点ですでに性根の悪さが声ににじみ出ている。

 また、黒崎との交渉場面で狡猾そうに眉を上げる仕草や、莫大な金額を前に思わず鼻の下を伸ばす様子など一挙一動に漂う守銭奴感……そして、詐欺の証拠動画が撮られたスマホを奪いとったときの勝ち誇ったような邪悪な笑顔……。普段の爽やかさはどこへやら、声も顔も悪い……。これ以上にない“悪徳理事長”を見事に演じきっていた。

■怖すぎるラスボス『マイホームヒーロー』志野寛治

 続いて、今年3月に公開された『映画 マイホームヒーロー』。原作『マイホームヒーロー』は山川直輝さん、作画の朝基まさしさんによるクライムサスペンスで、ミステリー好きの平凡なサラリーマン・鳥栖哲雄が半グレ組織に目をつけられ、犯罪に巻き込まれていく物語だ。

 津田さんは、犯罪組織「間野会」トップの志野寛治役を演じた。

 志野は哲雄を追い詰めていくラスボスなのだが、これがまた登場場面から怖い。高そうな臙脂色のスーツに身を包み、黒縁メガネをかけたオシャレなオジさんが、哲雄の職場で静かにシャボン玉を吹いているのだ。そして、穏やかとも虚ろともとれる表情で「こんにちは」と静かに発する声を聴くだけで、思わず寒気が走る。

 志野が怖いのは、何か分からないタイミングで突然ブチギレる(ただの“キレる”ではなく本当に“ブチギレる”)ところだが、普段から身にまとっている薄気味悪さがそれを増幅させているようにも感じる。

 ちなみに津田さんはオファーを受けたとき「ちょっと癖を強くしたい」という監督からのリクエストに対し、「あっ、やっていいんですか!(笑)」とワクワクし、人とのリズムや、喋り方、立ち振る舞い一つ一つに癖を持たせることでインパクトがあるキャラクターに作り上げたことを当時のインタビューで明かしている。

 そんな津田さんの演じる志野は声も表情も動きも何だかぬるりとしていて、捉えどころがなく、何を訴えようが通じない絶望感を抱かせるものがある。人間は“分からない”ことに最も恐怖や不安を感じるというが、津田さんの演技を見ているとそれも納得だ。

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