■勉強と恋愛の狭間で揺れ動くまだまだ幼い乙女心…『初めて恋をした日に読む話』江藤美香

 2016年より『Cookie』(集英社)で連載された持田あき氏の『初めて恋をした日に読む話』は、夢破れ予備校講師となった主人公・春見順子が、予備校にやってきた不良高校生・由利匡平とともにかつての夢である“東大合格”を目指し、奮闘していく少女漫画である。

 東大受験に失敗したことで予備校講師になった順子。匡平と彼の父の関係性にかつての自分を重ね、なにがなんでも彼を“東大”に入学させようと躍起になる。

 予備校の女講師と生徒という一風変わった恋愛が魅力の本作だが、順子の恋のライバルとして登場するキャラクターといえば、のちに予備校に入塾してくる女子高生・江藤美香だ。

 美香は匡平と同じ学年の2年生。匡平に対して強い恋心を見せる美香だが、一方でなんでも他人のせいにする「られたされた女」の一面を持つ個性的なキャラクターだ。

 実は彼女、中学生時代に担任教師と恋愛関係になるも、関係がバレそうになった途端、あっさりとフラれたことがトラウマとなり、人間不信に陥った過去を持っている。

 そうして、匡平を振り向かせるために予備校に通うことを決意する美香。恋心もより強くなっていく反面、匡平と順子の関係性に触れるなかで彼女自身も刺激を受け、ときに悩みながら成長していくこととなる。

 恋こそ実らなかった美香だが、勉強や恋愛を通じてさまざまなことを学び、匡平同様に大きな変化を見せたキャラクターとなった。

 

 主人公の恋のライバルとして登場し、結果、“負けヒロイン”となった彼女たち。いわゆる“当て馬キャラ”とも呼ばれる存在だが、彼女たちがきっかけとなって物語が動いたり、主人公が成長を遂げるというシーンも多い。

 恋に敗れる姿が切ない一方、のちに主人公を支える良き友人として活躍するのも、彼女たちならではの魅力なのかもしれない。

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