『君に届け』や『ひるなかの流星』にも…少女漫画に登場する「負けヒロイン」の涙ぐましい努力の画像
Netflixシリーズ『君に届け 3RD SEASON』(C)椎名軽穂/集英社・Production I.G

 少女漫画において欠かせないのが、主人公にとっての“恋のライバル”だろう。ライバルが奮闘すればするほどストーリーは盛り上がりを見せるが、最終的にその恋は報われないことが多い。

 たとえば、池野恋氏が手掛ける名作少女漫画『ときめきトゥナイト』に登場する神谷曜子もそうだ。主人公・江藤蘭世の恋のライバルとして存在感を見せつけるものの、結果、蘭世に敗北。いわゆる“負けヒロイン”として活躍した曜子だが、あまりにも可哀想な姿に同情し、感情移入してしまった人も少なくないだろう。

 そこで今回は、少女漫画に登場する曜子のような“負けヒロイン”の涙ぐましい努力を見ていこう。

■計算高いが抱いた純粋さと恋心は本物…『君に届け』胡桃沢梅

 2006年より『別冊マーガレット』(集英社)で連載された椎名軽穂氏の『君に届け』は、暗い見た目からクラスで恐れられている黒沼爽子を主人公に、彼女が高校生活のなかで体験していく友情や恋愛、それによってもたらされる成長を描いた学園少女漫画である。

 実は前向きで良い性格をしている爽子だが、あまりにも不気味な見た目から“貞子”と揶揄されてきた。しかし、自身に普通に接してくれたクラスメイト・風早翔太に恋心を抱いたことで、物語が動き出していく。

 作中、爽子の“恋のライバル”として登場したのが、翔太と同じ中学校の出身である胡桃沢梅だ。栗色の柔らかな髪の毛と大きな瞳が特徴的な美少女で、爽子と対照的な存在である。男子からも人気が高い梅だが、実は普段は猫をかぶっており、計算高い本性を隠し持っている。

 爽子に対して翔太から離れるように仕向けるなど策略家な一面を覗かせたが、一方で爽子と翔太の関係性が揺らぐことはなく、逆に彼女が成長するきっかけをも与えてしまう。

 作中では“悪役”のようなキャラクターとして描かれた梅だが、一方で翔太への恋心は本物。結果が分かっていても純粋な気持ちを抑えることができず告白するが、結果、フラれてしまう。

 恋は実らなかったが、この告白をきっかけに翔太への想いを吹っ切れることができた梅。ようやく本来の自分をさらけ出すことができるようになった。

 以降は爽子との関係も徐々に良好なものに変わっていき、最終的にはともに“高校の教師”を目指して勉強する、“親友”のような関係性を築き上げていく。

 “負けヒロイン”でありながら、その高い存在感で活躍し続けた梅。その姿が読者の心をも動かし、本作を代表する人気キャラクターの一人となっている。

■取っ組み合いの末に結ばれる主人公との友情…『ひるなかの流星』猫田ゆゆか

 2011年より『マーガレット』(集英社)で連載されたやまもり三香氏の『ひるなかの流星』は、東京の高校に転入した女子高生が担任教師の男性に惹かれ恋に落ちていく学園恋愛漫画だ。

 主人公・与謝野すずめは迷子になっていた自分を救ってくれたことをきっかけに、担任である獅子尾五月に徐々に惹かれていく。生徒と教師の間に描かれる恋模様……そして、すずめに恋心を抱く男子生徒との三角関係なども描かれ、物語は盛り上がっていく。

 そんな本作において、すずめの“恋のライバル”として活躍するのが、クラスメイトの女子生徒・猫田ゆゆかだ。小柄で非常に高い“女子力”を持つゆゆかだが、すずめのことを気にかけている男子生徒・馬村大輝に恋心を抱いており、彼女のことを敵視するようになっていく。

 作中では馬村を巡って幾度となくすずめと激突。ときにはすずめをハブらせるべく嘘の待ち合わせ場所を教えるなど、巧妙な嫌がらせをすることもあった。しかし、この出来事にすずめは激怒し、ついに取っ組み合いの喧嘩にまで発展してしまう。

 負けず嫌いゆえに一歩も引く姿勢を見せなかったゆゆかだが、一方ですずめとの衝突は互いが打ち解けるきっかけともなり、最終的には純粋な気持ちをさらけ出したことで和解することができるのであった。

 以降は、すずめの良き友人として関係性を深めていくゆゆか。すずめとの交流のなかで彼女もまた成長し、友達思いな優しい一面を持つ非常に魅力的なキャラクターとして読者を惹きつけていた。

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