■自費出版も!たゆまぬ努力の先に掴んだもの
原点回帰したジャイ子は、37巻「大人気!クリスチーネ先生」で渾身の『愛フォルテシモ』を描きあげる。ジャイアンが漫画の目利きに長けるのび太に作品を読ませると、のび太は驚いた顔で「ジャイ子が…、こんな美しい物語を…、あの顔で…。感動したよ。」と絶賛し、新人賞も狙えると言う。
一方のジャイ子は、自信作だからこそ、落ちたときのことを考えると不安で踏み出せないとネガティブモード。のび太も言っていたが、この不安は多くの読者にも理解できるものだろう。だからこそ「ジャイ子頑張れ!」と応援したくなってしまうのだ。
結果的には落選となるが、いいニュースもあった。なんと編集長から連絡があり、「すばらしい才能のひらめきが感じられる」と高評価を受けたのだ。これまでの努力が実を結んだ瞬間である。
そして39巻「虹のビオレッタ」で、ジャイ子は小遣いを貯めて同名作品を自費出版した。小学生ながらここまでするとは尊敬に値する。だが、ジャイアンが500円で押し売りしたためまったく売れず、ジャイ子は「みんな、いやがってるんだよ。あたしのマンガが、つまんないから。」と落ち込んでしまう。
が、ここでも嬉しい出来事が起こる。ドラえもんの道具で強引に買わせた人々の中に漫画コレクターがいて、「けっこうおもしろいよ。この作者は、今に有名になるかもね。」と褒められたのである。この歳で眼識のある人物に認められるのは実力があるからこそ。
ジャイ子がプロになれたかは原作では不明だ。アニメ版は少し違い、オリジナルエピソード「さきどりカプセル」で大人になったジャイ子がプロになり、『ウエディングメロン』が500万部を突破する様子が描かれている。
■実は恋のチャンスも掴んでいたジャイ子
実は、ジャイ子の恋が描かれたこともある。それが40巻「泣くなジャイ子よ」。ある日、ジャイ子が隣町に住む茂手もて夫に片思いしていることが発覚する。
彼はバレンタインチョコを100個近くもらう名前通りのモテ男子。妹を応援するジャイアンはドラえもんの「身がわりマイク」で二人の距離を近づけようとするが、のび太がジャイ子の声を操って「あたし、あんたが好きなのよ。友だちになってくんない?」とストレート過ぎる告白をしたため、ジャイ子は動揺のあまり逃げ出してしまう。
しかし、ジャイ子が動揺した時に落とした原稿を拾って、家まで届けにきてくれるというシンデレラのようなミラクル展開が起こる。しかもそこで、「ぼくもマンガが好きで、かいてるんだよ。ふたりで同人雑誌をださない?」と持ち掛けてくるという、とんとん拍子の進展っぷり。よかったねジャイ子……と見ているこちらまで嬉しくなってしまう。
二人はその後も仲良くしており、44巻「ジャイ子の新作まんが」では、ジャイ子とジャイアンがモデルであろうクリスチーネ剛田の新作『お兄ちゃん』を、もて夫が「こんなすばらしいストーリーははじめてだ。」と大絶賛している。
のび太と結婚する未来では、ジャイ子は漫画家としての道を歩まず借金に追われることになる。ドラえもんの登場によってクリスチーネ剛田となる未来線は、ジャイ子にとっても幸せなことなのかもしれない。