■バウンドした巡洋艦に押しつぶされたウッソの母、ミューラ・ミゲル

 最後に紹介するのは『機動戦士Vガンダム』に登場したミューラ・ミゲルだ。

 ミューラは、本作の主人公ウッソ・エヴィンの母であり、レジスタンス組織リガ・ミリティア創設者の一人であるハンゲルグ・エヴィンの妻、さらにリガ・ミリティア活動初期からモビルスーツ開発に貢献した優秀な技術者で、V2ガンダムの開発者でもある。

 ミューラは、“母”としての愛情はあったが“技術者”としての側面のほうが強く、ハンゲルグとともにウッソへ英才教育を施し、そして12歳だったウッソを残してV2の設計図を持って月にあがる。

 その後、月面都市セント・ジョセフでウッソと再会。久々の母子水入らずの時間を過ごすも、間もなくザンスカール帝国に囚われ軟禁状態となってしまう。

 第36話「母よ大地にかえれ」で、ゴズ・バールの乗るゾリディアに生身のまま握られ、“人間の盾”として使われたミューラ。圧倒的な性能を持つV2ガンダムに対抗するためとはいえ、このあまりにも非人道的な作戦に、あのカテジナ・ルースさえも「やってはいけない作戦というのがあります」と言っていた(その後のカテジナの数々の所業を見ると「お前が言うな」とも思うが……)。

 必死に母を救出しようとするウッソは、なんとかゾリディアの両脚を切断し動きを止める。しかし、ゾリディアはミューラを掴んだまま戦艦アドラステアの砲身の間で身動きが取れなくなってしまった。

 そんな状況のなか、不運にも前方を走行していた巡洋艦リシテアが悪路をバウンドしてしまい、その後ミューラのいるアドラステアの砲身部分に飛んでいってしまう。

 ウッソのV2ガンダムもシールドを張って受け止めようとするが、さすがに巡洋艦の質量は止めることができず弾き飛ばされ、あえなく待避。そしてミューラはゴズ・バールのゾリディアとともにリシテアの車輪に押しつぶされてしまい、凄惨な最期を遂げた。

 戦闘終了後、ミューラの遺品として回収されたヘルメットを抱えるウッソ。「よくわかりません…母さんです…」と言ってマーベットに渡すのだが、そのヘルメットがズシリと重いというシーンが壮絶過ぎて忘れられない。

 

 今回は、『ガンダム』シリーズで起きたあまりにも「不運すぎた」退場劇を紹介してきた。いずれのキャラもその活躍とは裏腹に、あっけない最期となってしまい、非常に悔いが残る残念なものだったように思う。しかし退場したのち、カツがカミーユの前に思念体として現れた際には、非常に吹っ切れた様子だった。残りの2人もそうであってほしいと願ってしまう……。

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