■シュール極まりない巨大化したヒロインの困り顔…『キテレツ大百科』
1974年から連載が開始された『キテレツ大百科』は、発明好きの小学生・木手英一(キテレツ)がさまざまな発明品を生み出すことで思いもよらぬ騒動に巻き込まれていく、SF要素を融合したコメディ作品だ。
ほかの作品同様、アニメが放送されていたのだが、1990年にこのアニメをベースとした同名のファミコン用ソフトがエポック社から発売されている。
本作はジャンプや踏みつけ、発明品を駆使して相手を倒していくオーソドックスなアクションゲーム。発明品が持つ個性的な能力や舞台が“夢の世界”であることを活用して重力を反転させ天井に張り付くなど、独自のシステムも数多く搭載しているのが特徴だ。
これもアクションゲームとしての難易度はかなり高め。前述の上下反転時の動作への慣れや、引き連れる仲間もダメージを受けないように配慮をしなければならないなど、独自のシステムが持つ癖を掴まなければクリアは難しい。
加えて、本作は夢のなかで遊ぶことができる道具「夢見鏡」によって生み出された世界が冒険の舞台となるため、荒唐無稽な存在やオブジェが散りばめられた、どこかシュールな世界観が続いていく。
原作キャラクターも多数出演するのだが、なかでも最初の救出対象であるみよちゃんは、“巨大化”させられたあげく、小さな家のなかに閉じ込められた状態で登場する。窓から覗く可愛らしくも巨大な困り顔のみよちゃん……なんともインパクトが大きい。
夢の世界ゆえの無茶苦茶な展開……といえばそうなのだが、窓一面に張り付いたみよちゃんの顔はどこか不気味でもあり、当時プレイしていた子どもたちに“悪夢”のような光景として焼き付いてしまったかもしれない。
藤子さんの作品は時を経てなお語り継がれる、凄まじい人気を誇るものばかりだが、一方でファミコン時代に登場したゲームたちはクセの強いものが多かった。また、ゲーム自体が高難易度なケースも珍しくはなく、子ども向けの作品と侮り、痛い目を見たプレイヤーも多かったことだろう。それが当時の子どもたちにとって、原作とは離れた場所で“トラウマ”となってしまったのかもしれない。