1992年に放送開始したアニメが社会現象となり、今もなお根強いファンに愛されている武内直子氏による漫画『美少女戦士セーラームーン』。その主人公であるセーラームーンこと月野うさぎは6月30日が誕生日だ。
90年代にリアルタイムでハマっていたファンだけでなく、現代の中高生にも人気のセーラームーンだが、その人気がここまで続いている理由は少なくない。
たとえば、普通の女の子が変身して敵と戦うというワクワクする展開や、前世にも関係するドラマチックな恋愛要素、アイテムや変身シーンのかわいらしさ、宝石や鉱物や天体がモチーフとなったおしゃれな世界観など、その魅力は書き出してみても枚挙にいとまがない。もちろんその中でも、心ときめくキャラクターが多く登場するところが一番の人気の理由だろう。
その物語のセンターに立つ主人公の月野うさぎは、ドジで泣き虫でおっちょこちょいな性格。さらにいえば遅刻と朝寝坊の常習犯で、学校の成績もかなり悪く、アニメ第1話から廊下に立たされる場面もある。運動音痴でもあることから、彼女のステータスを見ると、あまりに欠点が多いように見える。
しかしそこは少女漫画作品の主人公ということだろうか、彼女は物語の中で異様にモテている。その中には本来敵であるはずのキャラも少なくない。
今回は、作中で月野うさぎが夢中にさせてきたキャラクターたちと、彼女の真の魅力を考えたい。なお、今回は1992年から放送されていた旧アニメ版に準拠する。
■敵の心をも変えてしまう月野うさぎのモテ
まずは、のちに前世からの恋人だったことが判明する、作中でも恋人関係にあるタキシード仮面こと地場衛。
2人の出会いはお世辞にもロマンチックとはいえないもので、うさぎが丸めて投げた赤点のテストが偶然衛の頭にぶつかったことがきっかけだった。初めて出会ったときのお互いの印象は最悪で、以降もうさぎは衛を「あんた」「あいつ」と呼び、衛はうさぎを「たんこぶ頭」「お団子頭」と呼び、会うたびに憎まれ口を叩く仲だった。
そんな2人の関係性が変わったきっかけは、ダーク・キングダムの四天王の一人であるゾイサイトの攻撃を受けて、セーラームーンとタキシード仮面、それぞれがお互いの正体を知ったこと。以降意識し合うようになり、その後、結ばれていた前世の記憶を思い出して、本人たちも恋人同士になる。
これは「無印」と呼ばれるアニメ1期でのことだが、以降もうさぎはずっと衛のことだけを愛している。
さて、思い人がいるにも関わらず、うさぎのモテは止まらない。『美少女戦士セーラームーンR』前半にあたる魔界樹編に登場する、アニメオリジナルの敵キャラクター・エイル(銀河星十郎)もうさぎに恋をした人物だ。
魔界樹を救うために地球人の新鮮なエナジーを奪いにきた銀河星十郎はうさぎに一目惚れし、第1話では敵を召喚するために使う横笛で、彼女のために曲を吹こうとする場面もあった。ずっと愛を知らず奪うことしか考えていなかったエイルは、戦いが進みセーラー戦士と対決する中で本当の愛を知る。きっかけは一目惚れであっても、彼もまたうさぎに心を動かされ改心した敵だ。
『R』の後半パートに登場する敵組織、ブラック・ムーン一族の王子であるプリンス・デマンドもうさぎに恋をした一人。見た目は長めの銀髪のクールな美青年だが、彼の愛と言う感情はエイルとは様子が違うようだ。
デマンドはうさぎの未来の姿であるネオ・クイーン・セレニティに叶わぬ恋をしており、彼女に執着するあまり、彼女の若き日の姿であるうさぎをさらって無理やり妃にしようとする。
旧アニメ版ではそれでもその感情は純愛に近かったが、原作漫画でのデマンドはうさぎが憎悪の感情を直接向けた貴重な相手でもある。
デマンドも彼女に憎まれていることは分かっており、それでもなお彼女を我がものにしようとしていた。その歪んだ感情はまさしく“ヤンデレ”と言っていいだろう。
しかしそんなデマンドも、最後は敵のボスであるワイズマンの攻撃からうさぎをかばって死んでしまう。デマンドはもともと現在のうさぎ自身ではなく、未来の姿に恋をしたのだが、うさぎのモテ力は敵の心すら変えてしまうようだ。