■逆転劇への布石? 死亡してパワーアップ編

「主人公の死」というとどこか絶望的な展開に思えるが、一方で死からの復活をきっかけに思わぬパワーアップを遂げたキャラクターたちも登場している。

 1984年から連載された鳥山明さんの『ドラゴンボール』では、主人公・孫悟空が地球に襲来したサイヤ人・ラディッツとの戦いのなかで死亡してしまう。それまで数々の強敵を打ち倒してきた悟空のまさかの死に、当時の読者たちは大きな衝撃を受けたことだろう。

 悟空はのちにドラゴンボールの力によって蘇るが、死亡中、なんと界王様と邂逅することであの世で修行を続け「界王拳」や「元気玉」といった新たな力を身に着けて舞い戻ってくる。

 悟空ですら容易に勝利できなかったラディッツの実力に戦慄するとともに、悟空の意外過ぎるパワーアップ展開にも驚かされてしまうエピソードだ。

 また、1990年から連載された冨樫義博さんの『幽☆遊☆白書』では、主人公・浦飯幽助が「魔界の扉編」にて、強敵・仙水忍と激闘を繰り広げた末、死亡している。

 仙水の圧倒的な実力に仲間たちが一蹴される絶望的な展開だったが、そのさなかで幽助が自身に眠っていた“魔族”の力に覚醒し、息を吹き返す。真の力に目覚めた幽助には手も足も出ず、仙水は最終的に敗北してしまう。

 この「死からの覚醒シーン」は、幽助が魔界三大妖怪の1人である雷禅の子孫であったという予想外の過去に繋がっていく、なんとも印象的なエピソードとなった。

 主人公とその仲間たちを蹴散らした仙水の実力もさることながら、覚醒した新たな力によってそれを一蹴する幽助の強さにも心惹かれる、なんともインパクト大な“死亡”シーンといえるだろう。

 友情、努力、そして勝利がモットーの『週刊少年ジャンプ』の漫画作品だが、意外なことに作中で死亡してしまった主人公は多い。作品の顔とも呼べる主人公たちを殺害した悪役たちのその活躍に驚き、絶望してしまった読者も多いのではないだろうか。

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