■豹変ぶりと伏線の数々に読者も脱帽…『暗殺教室』茅野カエデ
2012年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された松井優征氏の『暗殺教室』は、どうやっても殺すことができない人智を越えた能力を持つ謎の生物・殺せんせーを生徒たちがあの手この手で暗殺しようと奮闘する、なんとも個性的な学園コメディ作品だ。
そんな暗殺対象である“殺せんせー”の名付け親となったのが、3年E組の女子生徒の一人・茅野カエデである。カエデは小柄なムードメーカーでリアクションも大きく、全体を通して出番も多い生徒だった。しかし、原作の第128話にて驚愕の事実が明らかになる。
なんとカエデは突如、首筋から生えた“触手”を用いて殺せんせーを襲撃したのだ。
実は彼女の本名は“雪村あかり”といい、殺せんせーに深くかかわり死亡してしまったクラスの前担任・雪村あぐりの妹だったのだ。
多くのファンを唖然とさせた急展開だったが、実は彼女に関する“伏線”は作中の至るところに散りばめられていた。
たとえば、甘いもの好きであったり、泳げなかったりと、あらためて見返してみると殺せんせーのような“触手”を持つ存在と共通点は多い。また、この髪の毛に隠れた“触手”だが、作者が意図的に各コマにわずかに見え隠れするように描いていたのも、実に巧妙な点だ。
加えて、彼女が途中からE組に転入した存在であるということを示唆するセリフも多く、あとから過去のシーンを見返し驚嘆したファンも多いのではないだろうか。
張り巡らせた伏線の数々とその豹変ぶりで、読者をも大きく裏切ってみせたキャラクターだ。
仲間として立ち振る舞っていたキャラクターたちが“裏切る”シーンはどれも衝撃的だが、その背後には実に複雑な事情が隠されていることも多い。“裏切り”の描写はもちろん、各所に張り巡らされた伏線の数々にも、思わず度肝を抜かれてしまうことだろう。