■仲間のために20km遠方からエール「大鐘音」

『魁!!男塾』には数々の“男塾名物”という伝統がある。そのうちの1つが遠く離れた仲間にエールを送る「大鐘音」だ。

 驚邏大四凶殺で、富樫が飛燕との戦いで苦戦していることを知った一号生の仲間たち。富士五合目で戦う富樫に向け、20km離れた場所から「フレーフレー富樫ーっ!!」と大声援を送ったところ、意識を失っていた富樫はその声を聞いて復活するのである。

 この大鐘音も民明書房の『戦国武将考察』で紹介されており、次のように解説されている。

 “武田信玄が上杉謙信と戦いで遠方にいる味方が苦戦に陥った際、味方の兵を励ますために一千騎の兵を並べ大声を出させ檄を送った。その距離はおよそ100キロ離れていたというから驚嘆だ”、と。

 さらに余談まで掲載されており、“昭和15年野球のW大応援団のエールは神宮球場から池袋まで聞こえたという”とまで、紹介されている。

 念のため、今回これを調べてみたのだが、残念ながらそうした事実はないようだ……。男塾に出てくる書籍には本当かウソか微妙な内容が描かれているため、読者は半信半疑のまま好奇心をもって物語を読み進めてしまうのである。

 

 男塾には民明書房をはじめとした出版社が刊行する“謎の書籍”によって、数々の伝統がたくさん登場する。いずれも真実か否か絶妙な内容が紹介されているため、スマホのない時代にそれらの伝統を信じてしまう読者が多かったのは当然だろう。

 あらためて見直すとツッコミどころ満載の書籍とも言えるが、そのような魅力も含めて男塾は多くのファンを惹きつけているのだ。

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