■涙なくして読めない『はみだしっ子』の子どもたち
さて、『花とゆめ』最初期の代表作といえば1975年から1981年まで連載されていた三原順さんの『はみだしっ子』シリーズがあげられる。
同作は、それぞれの複雑な事情で家を出た幼い4人が、心に闇を抱えたまま放浪する物語。
4人のリーダーであるグレアムは幼少期に父親の乱暴で右目を失明してしまう。さらに父の言葉によって伯母を亡くし、それを自分のせいと思い込んでトラウマをかかえている。このほか、幼少期に母親から棄てられたと悟るアンジーや、地下室へ幽閉されていたサーニン、酒乱の父親を持つマックスと、いずれも親に捨てられる、もしくは自身で親を捨ててきた子どもたちだ。
彼らは初登場時ではたった7歳と5歳。あまりに過酷な環境の中、そんな彼らには生きる上での選択が多く立ちはだかる。
「親という名を持った人間じゃなくホントに愛してくれる人」を求める彼らがけなげに生きていく様子はつい応援したくなってしまう。
重すぎる環境の中を必死に生きる『花とゆめ』の主人公たち。恋愛モノやファンタジー作品以外にも、人間の心の根幹に迫る魅力的な作品は多くある。