近年増加している漫画やアニメの実写化作品。日本国内はもちろん、ときには海外で制作されるというケースも少なくない。
しかしその中には、さまざまな事情で原作とは別物に仕上がっている作品もあり、特に10年以上前の作品にそうした傾向が強いように思われる。
そこで今回は、10年以上前に海外で製作されたものの中から、「賛否両論を生んだ人気漫画の実写化映画」を振り返っていきたい。
■北斗神拳の再現は難題だった?『北斗の拳』
まずは、原作:武論尊さん、作画:原哲夫さんによる『北斗の拳』(集英社)の実写化作品から。
これはハリウッドで製作され、1995年に公開された映画で、ケンシロウとシンとの戦いを中心に描かれている。『北斗の拳』の世界観というところで見ていくと、荒廃した世界は原作同様に再現されていた。
『北斗の拳』は、原哲夫さんが語っているように映画『マッドマックス2』を意識している部分もあるので、それに近いものも感じる。しかし、難しいのは北斗神拳をいかに表現するかというところだろう。
原作では秘孔を突くことで相手が派手に爆発して死ぬ……のだが、これを実写で再現しようと思うと意外と地味になってしまう。あの迫力は漫画やアニメだからこそ十分に表現できる面もあるのかもしれない。当時は現在ほどの映像技術がなかったことを踏まえると、仕方がなかった面もある。
随所に工夫は感じられるもののツッコミどころも多く、厳しい評価を受ける結果になってしまった。だが、その一方で吹き替えの声優陣を称賛する声もあり、本作はアニメと同じくケンシロウ役は神谷明さん、シン役は古川登志夫さんが担当。ファンとしてはそこはやはり魅力だったようだ。
本作をもし現在の技術力で作り直すとしたら、トキやラオウの戦う姿も見てみたい気が……。個人的にはサウザーが登場する聖帝編の実写化を希望したいものだ。
■原作とは別物に…『ドラゴンボール』
次は鳥山明さんによる『ドラゴンボール』(集英社)の実写化だ。こちらは『ドラゴンボール』25周年を記念して製作されたもので、2009年にハリウッド映画『DRAGONBALL EVOLUTION』として公開された。
『ドラゴンボール』には「かめはめ波」のような描写があるので、それを実写化するのは難しかっただろう。さらに、ストーリーも「サイヤ人編」以降になると壮大すぎるためか、この映画は「ピッコロ大魔王編」に手を加えたものになっている。
驚いたのは悟空の設定が変更されていて、頼りない高校生が世界を救うといった感じに。他のキャラ設定も違っていたので、原作とは別物だと考えたほうが良いかもしれない……。
しかし、かめはめ波やピッコロ大魔王の気功波などを、当時の技術でしっかりと再現していたところには評価の声も。同じことを日本でやろうとすると、資金や時間がかかりすぎて製作自体が難しかったはずだ。これは潤沢な予算があるハリウッドでないとできなかったかもしれない。
とはいえ、原作とのあまりのイメージの違いから多くのファンから厳しい声を投げかけられることに。愛されている作品だからこそ、その反動も大きかったのだろう。