■『るろ剣』緋村剣心、薫の死を目の当たりにする

 実写映画がメガヒットを記録し、新作アニメも大ヒットした『るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー』は、幕末に活躍した人斬りが明治の世で不殺を誓い流浪人として活躍する名作漫画だ。この作品にも、決定的に間に合わなかったエピソードがある。それは剣心の過去の因縁を描いた『人誅編』でのことだ。

 このエピソードでは剣心の妻だった雪代巴の弟・縁が、明治の世になって復讐にやってくる。縁は剣心のせいで姉の巴が死亡したと誤解していて、剣心に恨みのある者を集めて、神谷道場を襲撃してきた。

 そして、剣心と縁の戦いは激化し、剣心の奥義「天翔龍閃」が破られてしまう。しかしそれでも剣心は縁を圧倒しており、敵を徐々に追い詰めていった。しかし縁の狙いは、剣心を殺すことではなく、絶望を与える事だったのだ。

 縁は剣心の隙をついて薫の前に現れ、彼女に「あんたにはここで犠牲になってもらう」と言い放つ。その後あわてて薫のもとへと急いだ剣心が目にしたのは、大刀に胸を貫かれた彼女の姿だった。

 その後、薫の死によって抜け殻のようになった剣心が、絶望の中で自分を責め続ける展開は、ファンの間でも語り継がれている。結果的には薫の死体は偽装であり、彼女は縁によって連れ去られていたという真実が明かされた。メインヒロインの死という衝撃の展開は連載当時のファンからも賛否があったが、剣心が本当の意味で幕末の呪縛から解き放たれるために必要な展開となっている。

 

 今回は、『北斗の拳』、『ONE PIECE』、『るろうに剣心』と漫画史に残る作品の中で、守るべき誰かの危機に間に合わなかったキャラを紹介してきた。

 ピンチに間に合わなかったキャラは、その後大きく成長することも少なくない。ストーリーを盛り上げる上で、こうした展開は欠かせないともいえるだろう。

 それぞれが苦悩を経て成長する姿も名シーンとして語り継がれているため、ぜひその後の展開にも注目してみてほしい。

  1. 1
  2. 2