漫画作品には“お金”に対し度を越した執着を見せるキャラクターがしばしば登場するが、その背景や理由も実にさまざまだ。今回はその中から主人公サイドのキャラクターに注目し、“お金”のために悪と戦うことを公言している者たちについて紹介していこう。
■すべては実家を助けるため、意外過ぎる節約術も必見…『僕のヒーローアカデミア』麗日お茶子
2014年より『週刊少年ジャンプ』で連載開始された堀越耕平氏の『僕のヒーローアカデミア』は、“個性”を活かし活躍するヒーローたちと敵(ヴィラン)の戦いを描いたバトル漫画だ。
本誌ではいよいよ物語も終盤に差し掛かり、ますます盛り上がりを見せている本作。その中で“お金”を稼ぐためにヒーローを目指していた人物といえば、ヒロインとしても活躍するクラスメイトの一人・麗日お茶子だろう。
彼女は明るくおおらかな性格から誰とでもすぐに打ち解ける好人物で、主人公・緑谷出久にとってはもちろん、その存在感はともにヒーローを志す仲間たちにとっても大きな支えとなっている。
「無重力(ゼログラビティ)」なる個性を活かし、ヒーロー・ウラビティとして活躍するお茶子は、建設会社を経営する父親と母親のもとで生まれ育った。家族仲は良好だったものの、一方で会社の経営は芳しくなく、彼女は常に疲弊した両親の姿を見て成長してきた。
一時は自身の個性を活用して家業を手伝おうとも考えたお茶子だったが、両親は彼女が“夢”に向けて挑戦することを後押ししてくれた。この経験からお茶子は「お金を稼いで両親に楽をさせてあげたい」という強い思いを抱き、ヒーローの道を志すこととなる。
そんな背景から、彼女はお金に関しては非常にストイックな姿勢を見せており、単行本のおまけページでたびたびお茶子流の“節約術”も披露している。
だがその内容はどこか極端なものが多く、「起きているとお金がかかるので寝て過ごす」、「ご飯はお金がかかるから食べない」……などなど、彼女が決して表には見せない涙ぐましい努力を垣間見ることができるのだ。
両親を助けたい一心から“お金”に執着し、ヒーローとして活躍し続ける、なんとも健気なキャラクターである。
■家族や仲間からの扱いの悪さに、思わず涙…『チェンソーマン』東山コベニ
2018年より『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった藤本タツキ氏の『チェンソーマン』は、“悪魔”が存在する日本を舞台に、主人公・デンジをはじめ“公安”の面々が戦いを繰り広げていくダークファンタジー作品である。
現在は『少年ジャンプ+』にて第2部が連載されている人気作なのだが、第1部にてとんでもない苦労人エピソードを披露したのが、デンジとともに戦う公安の仲間・東山コベニだ。
臆病でなにかにつけてオドオドしている女性なのだが、動物並みの身体能力で三徳包丁を使い戦う肉体派のファイターである。
その性格ゆえ、なにかと劇中で不幸な目にあうことも多く、特に同僚であるパワーからはかなり理不尽な扱いを受けている。パワーによって愛車(しかも新車)を乗り回され人を轢き殺されたり、その車が戦闘中に大炎上したりと、なぜか知らず知らずのうちに割を食っている場面が多い。
そんな彼女だが、なんと9人姉妹という大家族の一員で、元々は公安のデビルハンターになどなるつもりもなく、普通の大学生として暮らすことを望んでいた。
だが、親が彼女よりも優秀な兄を大学に行かせることを選んだため、“デビルハンター”になるか“風俗”で働くかの2択を迫られてしまう。そのせいで、彼女は嫌々ながらもお金を稼ぐため、死と隣り合わせの公安へとやってきてしまったのだ。
過去から現在に至るまで薄幸っぷりが際立つキャラクターなのだが、一方で妙な悪運も持ち合わせており、犠牲者が多く出る本作において数少ない生存者にもなっている。
家族のためとはいえ、何から何まで報われないその薄幸っぷりに、見ているこちらが心苦しくなってしまうキャラクターである。