■長男としての執念で乗り越えた地獄の修行『鬼滅の刃』

 最後に、現在アニメにて「柱稽古編」が絶賛放送中の、吾峠呼世晴さんの『鬼滅の刃』から、序盤で見られた修行を紹介しよう。

 炭治郎は鬼になった妹・禰豆子を人間に戻すべく剣術を磨くため、鱗滝左近次を頼ることとなる。俊足の鱗滝を必死で追いかけたあと、へとへとのまま霧深い夜の山に連れていかれた炭治郎は、夜明けまでに麓の家に戻るよう告げられ一人取り残されてしまうのだ。

 道中には多彩な罠が仕掛けられており、勢いよく飛んでくる小石が直撃したかと思えば落とし穴にはまり、這い上がったかと思えば背後から丸太が激突してくる。さらに山の酸素の薄さからまともに呼吸するのも一苦労で、片時も休むことができない。

 漫画ではこのあとボロボロの炭治郎が家に到着する姿が描かれるのだが、アニメ版ではその過酷さがより色濃く描かれていた。

 山中を駆け回る炭治郎めがけて四方八方から飛んでくる丸太は、そのまま地面に突き刺さるほどの威力で、人間に当たれば即死は免れないだろう。さらに弾丸のように飛んでくる小石や、しなる竹によって激しく地面に叩きつけられたりなど、常人なら致命傷になりかねない罠ばかりだったのである。

 正式に修行を受けることになってからも罠だらけの山から下りる修行はおこなわれ、新たに登場した刃付きの罠は、一瞬の気の緩みが死に繋がりかねない内容となっていた。

 鱗滝は過去に鬼殺隊最終選別で弟子を失っていたことから炭治郎を送り出すのをためらっていたが、下手をすれば修行の時点で炭治郎を失いかねないほど、非常に過酷な修行であった。

 

 『ジャンプ』作品で描かれる、死のリスクが伴う過酷な修行の数々。漫画だからといえばもちろんそれまでだが、その世界観に自身を重ねてその過酷さに悶えながら読むというのも、物語を楽しむための一つの読み方であるように思う。

 その先にある“強さ”を求めて奮闘する作品ごとの修行シーンを、好きなキャラクターたちに寄り添うようにともに苦しみながら楽しんでいこうではないか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3